ユーティリティの距離感が、プレーの生命線
ウッド型ユーティリティは、ボールの高さを出したり、飛距離を出すには有利だが、方向性や距離感はアイアンよりも劣る。そのクラブを使って、敢えて距離感を出していくのが、宮里のゴルフの生命線だ。クラブの機能を活かして弾道の高さを補いつつ、本来は難しい距離感を出す技術を磨いてきたのだ。正確無比なユーティリティのショットは、そのクラブを我がものとする努力の賜物に他ならないだろう。
体格差を克服し、他の選手にない武器を駆使して戦う姿は、漫画『巨人の星』の主人公、星飛雄馬にも似ている。ご存知の人も多いだろうが、飛雄馬は「球質が軽い」というプロのピッチャーとしての致命的弱点を、数々の魔球で克服した。宮里もまた、尾崎将司やタイガー・ウッズのような本格派の速球ピッチャー然としたタイプではないが、巧みなインサイドワークが特徴の技巧派として、数々の勝利を手にしてきた。
清々しいプレーと飛距離や体格面でのハンデ。メジャー大会制覇への情熱と挫折。圧倒的な強さを持つ選手ではなく、爽やかさの中で必死に戦う、光と影を抱えているのが、宮里藍という選手だ。だからこそ、そのひたむきさが美しく、ファンの胸を打つ。
星飛雄馬は、身体はボロボロになり悲劇的な結末を迎えるが、幸い、藍ちゃんはそんな泥臭さとは無縁だ。残り少ない出場試合で、最後の輝きを見せてくれるに違いない。
