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栄光と挫折の果てにあった、タイガー・ウッズのマスターズ制覇

text by Kazuhiro Koyama/Photo GettyImages

配信日時:2019年4月19日 19時10分

復活のプロセスは、まずボール選びからはじまった

タイガーが使う『TOUR B XS』に注文が殺到しているという

タイガーが使う『TOUR B XS』に注文が殺到しているという

ひざの怪我、そしてスキャンダルに端を発した長きにわたる不調を、ここでは多く語らない。それまでのタイガーの輝かしいキャリアは失墜し、メジャー優勝から11年も遠ざかってしまった。

近年になっても、ベッドから起き上がることも出来なかったという腰の故障で4度の手術を受けた。2年前のマスターズは、出場はおろか、チャンピオンズディナーでさえ神経ブロック注射を打って出席したほどだった。そして5月には薬の副作用が原因で逮捕されるという事件があった。「タイガーはもうダメかもしれない」と多くの人が感じたあのどん底から、まだ二年弱しか経っていないのだ。

タイガーの劇的な復活劇は、まずボール選びから始まった。各社の多くのボールを打ち比べ、最終的に選んだボールは、ブリヂストンの『TOUR B330S』。
現在、タイガーが使用する『TOUR B XS』はマスターズ優勝以来、日米で品薄になっているという情報もある。ボールに施された“B”マークが、オーガスタの地で何度もアップになっているのは印象的だった。

様々な特許技術をバックボーンに開発され、タイガーをして「最高のボールだ」と言わしめたブリヂストンのボールは、ボール契約フリーのプロを含め多くのトップアマに支持されている。近年着実にシェアを伸ばしているが、今回のタイガーの優勝で大きくジャンプアップしそうな勢いだ。
マスターズ最終日、「B」マークが導かれるようにカップに吸い込まれ続けた

マスターズ最終日、「B」マークが導かれるようにカップに吸い込まれ続けた

ちなみに、マスターズ最終日の16番でホールインワンを決めた「ゴルフの科学者」ブライソン・デシャンボーと、同組でラウンドしていたアマチュアの金谷拓実も同じブリヂストンの『TOUR B X』を使用している。
最終日の卓越した弾道のコントロール、そしてマネージメントは、最初にボールを選んだ2年前の決断から始まったと言っていい。ギア選び、スイング作り、そしてコース戦略など、タイガーが綿密に計画したプロセスのすべてがマスターズ優勝へと帰結していった。14年ぶり5度目のグリーンジャケットは、時間をかけて一つ一つ積み上げられた積み木の頂点に存在したのだ。

マスターズ終了後、トランプ大統領のツイートで、タイガーに大統領自由勲章を送ることが発表された。ゴルフ界ではアーノルド・パーマーとジャック・ニクラウスの二人のみが授与されているという。

そして、オバマ元大統領もタイガーについてツイートしていた。なかなか相容れなそうに見える二人だが、ともにゴルフ好きであり、タイガーを称賛する気持ちは共通している。

“Congratulations, Tiger! To come back and win the Masters after all the highs and lows is a testament to excellence, grit, and determination.”
(おめでとう、タイガー! 多くの浮き沈みのあとで復活し、マスターズに勝利したことは、卓越性とくじけない勇気、そして決意の表れです)

人生の浮き沈み、栄光と挫折を経験したからこそ、この勝利はより美しい。これほどのシーンに遭遇できたことは、ゴルフファンとしても幸福なことだったと思える。このマスターズの勝利によって、今年のメジャー大会はタイガーを中心に展開されるだろう。そして、そのすべてが極上のドラマになるはずだ。
誇らしげに、5着目のグリーンジャケットに袖を通した

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