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「あの試合がなかったら今も悩んでいたかも」 キャリアハイの裏にあった“ゴルフ人生初”のターニングポイント【勝みなみ・特別インタビュー後編】

米ツアー4年目のシーズンを迎える勝みなみに、単独インタビューを敢行。飛躍した昨年、そして今季について話を聞いた。

所属 ALBA Net編集部
間宮 輝憲 / Terunori Mamiya

配信日時:2026年2月18日 12時00分

充実のオフを過ごす勝みなみ。そのために重要な意味を持った試合とは?
充実のオフを過ごす勝みなみ。そのために重要な意味を持った試合とは? (撮影:佐々木啓)

米女子ツアーは2月19日に始まる「ホンダLPGAタイランド」から春のアジアシリーズを迎える。今季2戦目となる試合で、初戦を迎えるのが今年で米ツアー4年目となる勝みなみだ。昨年はシーズンのポイントランキング18位になり、上位60人のみが出場できるシーズン最終戦「CMEグループ・ツアー選手権」に初出場。さらに獲得賞金も100万ドルを大きく超える170万7091ドル(約2億6972万円)を稼ぎ出すなど、キャリアハイの1年を過ごした。昨年得た手応えは? さらなる飛躍を期す2026年にかける想いとは? 単独インタビューを実施し、胸中を聞いた。後編は、キャリアを振り返っても「特別」と感じられた試合、そして今季へ向けた取り組みについて。(取材/構成・間宮輝憲、取材協力・茨城ゴルフ倶楽部)

【連続写真】飛距離が出る秘密は? 勝みなみの“超最新スイング”



昨年、勝は忘れることができない経験をした。

「自信を取り戻した試合でした。優勝できていれば一番よかったんですけど、チャンスがいっぱいあるなか、なかなかパターも入らなかったし、そこは仕方ない。あの試合でゴルフへの自信が戻ったし、すごく大きかったですね」

それは8月に行われた「AIG女子オープン」(全英)のこと。35位で予選を通過すると、3日目に「65」をたたき出し4位まで浮上。優勝した山下美夢有に2打及ばなかったものの、チャーリー・ハル(イングランド)と並び2位になったメジャー大会だ。「65」を記録することになる3日目の朝。そこまで「71」、「74」と平凡なスコアが続くなかで、開き直ったことがその後、大きな意味を持つことになる。

「2日目に(オーバーパーを)打ってしまって、カットラインギリギリで通過することになりました。その時に『あと2日間、こんなに素晴らしいゴルフ場でプレーできるなら、いろいろ試そう』と思ったんです。小学生まで教わっていたコーチが言っていた言葉を思いだしながら、あれやこれや、朝の練習場からいろいろなことを試してみて。そのなかで、ひとつのことを意識しようと決め、応急処置のような感覚で試合に臨んだんです。それがこの時できる最大限のスイングでした。ただ、それがハマったんです」

昨年の「AIG女子オープン」は、勝みなみにとって、大きな意味を持つ大会になった。

昨年の「AIG女子オープン」は、勝みなみにとって、大きな意味を持つ大会になった。 (撮影:GettyImages)

コースで得たのは“急激に変わっていく”感覚。それは、時間が経過した後も「めちゃくちゃ頭に残っています」という体験だった。2014年に、当時のJLPGA(日本女子プロゴルフ協会)ツアー最年少記録となる15歳293日での優勝を果たすなど、「人生が変わる、環境が変わる」試合は、これまでのゴルフ人生で幾度も経験してきた。ただ、「自信がつく試合はなかったかな」という。全英での一日は、それまでとは一線を画すものだった。

「どんなに優勝しても、しっくりくる優勝というのはまったくなかったんです。応急処置をして、不安ななかスイングして、それがうまくいって優勝してきたなかで、『これだ』と思ったものをしっかりと意識し、うまくいったというのは初めてのことでしたね。(これまでの経験のなかで)あの試合が一番よかったかもしれない。あれがなかったら今でも悩んでたかもしれないと思える。成功体験が続くことが大事。どこかひとつがよくても、次に続かないと意味はない。そうことも学べた試合でした」

実際、全英を含め、そこからトップ10入りが4試合と、それ以前と比べ倍増。首位発進しながら悪天候のため競技が不成立となった「ウォルマートNWアーカンソー選手権」も9月のことだ。昨年、予選落ちした3試合も、すべて全英以前のもの。躍進につながる気づきになった。

明るい表情で臨むオフ。これまでとは違う感覚で過ごせている。

明るい表情で臨むオフ。これまでとは違う感覚で過ごせている。 (撮影:佐々木啓)

オフに入っても、「不安はない」ときっぱり言い放つ。むしろ「楽しみばかり」と話す表情は明るい。昨年までのオフは試行錯誤の連続だったが、今年はスイング作りで意識することも、全英で好転のきっかけになった“原点回帰”がメーンになっている。

「どうしても基礎的な部分を忘れがち。ボールを見るとか、左腕を伸ばしながらクラブを上げるとか。小さい頃に教わったことが幹になり、そこから枝が伸びていくべきなのに、基礎の部分がどんどん細くなって、枝ばかり太くなっていました。それではバランスは悪くなる。だから今年のオフは“基本”をベースにやっていこうと決めました。意識する場所がいくつかあるので、そこを練習で徹底し、コースではあまり考えなくてもできるように。そう取り組んでいます」

体作りも、やはり昨年のシーズン中に学んだことを、継続している。夏場に1週間、トレーナーに見てもらったことが、今後の礎になることを予感している。「腹筋を鍛えてるんです。今はそこが弱いけど、強化したらスイングが崩れてもコアが助けてくれると言われて、続けてみると、すごく調子もいいんです。腹筋って大事だなって」。時には母の手も借りながら、一日20分ほどの自重トレは欠かせない。シーズン開幕時から、そこが強化された状態で臨めるのも「楽しみ」のひとつだ。

オフのラウンドは自らキャディバッグを担ぎプレーする。

オフのラウンドは自らキャディバッグを担ぎプレーする。 (撮影:佐々木啓)

何かを変えるわけではない。そういった意味では精神面だけでなく、ゴルフ面、フィジカル面どこを取っても、やはり2025年は重要な一年になった。それが「進化できる年かな」という自信にもつながっている。取材時に話していた懸念点も、「5番ウッドだけ6~7年前の型を使っていて、それだけが心配。もうあのモデルはないので、新しい5Wをお願いしているんです」という一点だけだ。

「今までは、いいものが自分のなかで定まらず、とにかく新しいものを試していく時期だった。今は“これ”というものがあり、それを体に染み込ませる段階までいっている。やっといいものが見つかった確信も持てているし、ひさしぶりに楽しくゴルフができているんです。いいプレーがたくさんできそうな予感があります」

もう日本への帰国ばかりを考えていたころの姿はない。

スタッツ面を見ると『1.59』という数値だったパーオンホールでの平均パット数は、全体1位。『28.63』だった1ラウンドあたりの平均も2位など、米参戦以降苦しんできたグリーン上でもハイパフォーマンスを続けた。「最終的にはパターがうまくないと勝てない。ジーノ(・ティティクル)も、ミンジー(・リー)もうまいじゃないですか。ショットが悪くてもパターでしのぐ強い選手の姿を見てるから、パターって大事だなということを改めて感じる1年でもありました」。バーディ数は『413』で2位と、もともと持っている攻撃性もそれにより輝いた。1ケタ順位の項目は、他にも目立っている。

今季の目標は「もちろん優勝」。そこに「メジャーも5試合あるので勝ちにいきたい」という言葉もつけ加える。「いいゴルフができるよう、初心、土台の部分をしっかりと整えていけるように。常にいい状態で試合に臨める1年にしたい」というのもブレない部分。優勝の足音が徐々に近づいていることも、誰よりも感じられている。「これまでは不安が大きかったけど、その不安要素がほぼない。楽しんでできる1年になりそう」。開幕時の心持ちも自ずと変わってくる。

「行ったことない野球場にも行ってみたい。野球以外でも、サッカーのW杯もあるし(今回はカナダ、メキシコ、米国の3カ国で共同開催)機会があればいきたいですよね。今一番気になってるのはアイスホッケーなんです。行ってみたいですね。プロレスも好きなのでAEW、WWEも見てみたいんです」。3年間を過ごし、米国の生活にもすっかり慣れてきた。そうなるとコース外の“推し活”にも拍車がかかりそう。キャリアハイだった昨年を超える自分の姿、それもはっきりとイメージできている。タイでの今季初戦でも、曇りのない表情でプレーする勝を見ることができそうだ。

自信を胸に2026年シーズンへ向かっていく。

自信を胸に2026年シーズンへ向かっていく。 (撮影:佐々木啓)

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