3世代目の『オノフFFアイアン』が、カタログモデルに昇格!
山崎氏 「そうなんです。先日、新しい『オノフ赤FF』アイアンをコースでテストしてもらうと、7Iで215ヤードをすごく高弾道で止めることが出来て、【顔もそのままですごく構えやすいし、コレ、使いたいです!】と、UTの代わりに『オノフ赤FF』の5I(21°)と7I(25°)をテストしてもらっています。本来は『オノフ赤』よりも飛ばしたい人向けに開発した、いわゆる【ぶっ飛び系アイアン】なのですが、こちらの期待以上に気に入ってもらえましたね。【アイアン形状の方が弾道を操りやすい】と話していました」
男子プロだから、ぶっ飛び系アイアンの7Iで215ヤードを打つことは理解できる。ただ、ウッド型UTの方がスピン量も球の高さも出せるメリットが高そうだと普通は想像する。今回の『オノフ赤FF』には何か秘密があるのだろうか。
山崎氏 「秘密というか、実は今回で『FFアイアン』は3代目になるんですね。我々は『LAB0SPEC』名で、提案型の意欲作をオノフ特約店中心に展開していて、過去2作も知る人ぞ知る『LAB0SPEC』専用商品でした。やはり、ロフトの立ったぶっ飛び系アイアンという特殊な存在でもありますから。今回、第3世代として前作までの7Iロフト26°から、1°立てて25°にしました。性能面で大きなアップデートが出来たので、『LAB0SPEC』から昇格する形で、『オノフ赤』に並び『オノフ赤FF』を通常の量販店でも手にして頂ける形にしました」
性能面での大きなアップデート。その中身とは何なのか?
超ぶっ飛び系には見えない。アイアンらしい美しさ
構えてみて驚いた。その顔つきは、ロフト25度の7Iには見えない。ややオフセットの入った美しい形状は、ロフト29〜30度前後のアイアンのそれである。他社の超ぶっ飛び系アイアンのようなフェースが低く、タラコのような形状に見えがちな点が一切なかった。この美しさなら浅地洋佑がすんなりと「使いたい」と思うのも頷ける。
そして、オノフといえば、フェースの上下を分離させた独特の反発哲学を持つ。それが「ダイレクトリパルジョンフェース」で、フェースの実打点エリアの反発を最大化する構造を持つ。筆者からすれば「上部エリアの反発を捨てた」と映るが、山崎氏は否定する。
山崎氏 「いえいえ、その言い方には語弊があります。アマチュアの打点傾向に合わせることが本当のユーザビリティですから。プロや上級者ほど、打ち込んでいくため打点は上というか、真ん中近くになりますが、多くのアマチュアの場合、それよりもスコアライン1本半ほど下にきます。真ん中ではなく、実打点の反発を上げることこそ、大切ではないですか? ラフから強烈に打ち込まない限り、そこまで上部に当たるケースはないというか」
話だけを聞いても疑念は晴れなかったが、それも筆者の杞憂に終わった。(後述する)
最薄部1.5mm。高反発値でも……適合!
「最薄部は1.5mmです」と山崎氏。筆者は耳を疑った。「それって、高反発になりませんか!?」と氏に問い直す。すると、笑いながら販売店のバイヤーなどからも同様の反応がよくあると明かしてくれた。
山崎氏 「いえいえ、適合ですよ。(笑)でも、そう反応される量販店の方も多いです。というのも、数値は明かせませんが、反発値がものスゴいことになっていますので。でも、クラブの反発というのは、ルールで規定されていますので、高反発値でもルール適合内にぎりぎり収まっているんです」
つまり、高反発値だけど、ルール内。数多と出てきた超ぶっ飛び系の中でも、量販店のバイヤーや筆者が心配になるほどの数字とだけは言える。さすが、飛びにこだわった3代目『オノフ赤 FF』というべき裏話である。
中空の『オノフ黒』が高評価でも、そうしなかった意味
市場で高く評価される、ピン『G710』(ロフト29度)やタイトリスト『T400』(ロフト25度)も中空構造。アイアン型UTもみんな中空だし、市場でも評価の高い『オノフ黒フォージド』も中空なのに、なぜそれを選ばないのか?
山崎氏 「そこは社内でも非常に議論がありました。中空にすれば、『オノフ黒フォージド』のように、シンプルでカッコいいデザインも作れますから。でも、開発としては、どうしても飛びにこだわりたかった。アイアンらしい美しい形状で、最も飛ぶものを作るに辺り、選んだのが今回の形です。
こちらはガンメタイオンプレーティングで精悍さを増していて、ソケットも長いものを選び、バックフェースも荒々しさを表現した特別なものですね。比べてもらうと、通常のオノフの大人の上質さを表現したものと、また違った良さを感じて頂けると思います。飛距離性能はもちろん、両方とも極限ですね」
オノフが作ると、ぶっ飛び系でも長く使いたくなる
というわけで、打ってみた。ターゲットはもちろん、浅地洋佑の215ヤードを超すこと。その目論見は、ウォーミングアップなしの1球目で達成された。219ヤードキャリーのトータル230.1ヤード。高さは33mを越えたドローボールが表示された。
山崎氏 「えっ……、230ヤード!? いや、ちょっと待ってください。あっ、これはトラックマンのボール設定が間違っていました。浅地プロがテストした設定にし直すので、ちょっと待ってください……(汗)」
いや、驚いたのはこちらの方である。1球目で理解できた。この際、トラックマンの数字などどうでもいい。この美しくも安心感ある形状は、他社のぶっ飛び系アイアンのどれにも当てはまらない。そして、弾きがよくも、スチャッ!とフェースがたわみながらボールが乗るフィーリング。単なる弾きの強さだけじゃない。これは、曲がらず、球を安定させられる手応えである。浅地洋佑が「ボールコントロールしやすい」と言うのも当然だろう。
ぶっ飛び系アイアンによくあることだが、一発だけマグレで飛んでも使えるものにならないことは、ゴルファーの本能としてよく分かっている。山崎氏とオノフが追求した「美しいアイアンらしさ」を持つことがいかに大事か。当然のことだが、浅地洋佑もその本質に正直なのだと改めて感じる。
マグレ当たりでぶっ飛ぶのはドライバーだけでいい。「長く使えるアイアンの本質」が何なのか? その一番大事な部分が追求されているのが『オノフ赤FF』アイアンだと感じた。そう思えるぶっ飛び系アイアンは、初めてかもしれない。
Text/Mikiro Nagaoka
