これまでテレビ越しに見てきた憧れの舞台に、人生で初めて足を踏み入れた。実際に目の前に広がっていたのは、言葉では言い尽くせないほど美しい景色と、まるで別世界に迷い込んだかのような特別な空気。オーガスタ・ナショナルGCを初取材した記者が、その魅力をお届けする。
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前回はメディア専用施設のプレスビルディングに感銘を受けたことを書いたが、今回はそこで出会った“パトロンたち”の魅力について触れたい。
通りすがる人と目が合えば、自然に笑顔が返ってくる。ビールが注がれたグリーンカップを片手に、思い思いの場所で観戦を楽しむ姿もまた、マスターズらしい光景だった。
中でもまず目を奪われたのは、ファッションだ。これほど多くの人が、マスターズカラーである緑を、それぞれ自由に着こなしている光景は初めて見た。
男性はさまざまな緑色のポロシャツを着たり、白色のシャツに淡い緑色のパンツなどの組み合わせをしていた。男性は濃淡さまざまなグリーンのポロシャツに白パンツ、あるいは白シャツに淡い緑のボトムス。女性たちは緑を基調に、ピンク、ベージュ、白、黒、黄色を巧みに合わせ、華やかな装いを楽しんでいた。
ここはファッションの祭典なのか? そう思わされるほど、オシャレなパトロンたちの洗練された装いがあふれていた。オーガスタだからこそできるファッション。もしまた訪れる機会があるなら、筆者も緑色をベースにしたコーディネートで、会場を楽しみたい。そんな気持ちになった。
もうひとつ印象的だったのは、観戦用の椅子だ。パトロンたちが使う椅子はすべて、ショップで販売されている緑色の専用チェア。それに名前を書き、朝早くからお気に入りの観戦場所に置いて席を確保する。景観を守るため、椅子までグリーンで統一されているという徹底ぶりだ。
会場内には『Quiet Please』(静かにして)などの看板を目にしない。選手たちが近くでプレーしていると、自然とパトロンたちが静かになり、選手のプレーに集中する。あれだけ大勢の観客がいるにもかかわらず、選手が打つときだけ空気が張り詰める。それに感銘を受けた。
世界最高峰の舞台には、それを支える世界最高峰のパトロンたちがいる。それを強く感じさせられた。(文・高木彩音)
