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今度こそ、PGAツアーの体質改善!?【舩越園子コラム】

メジャー大会が目白押しの昨今、米ゴルフ界は目まぐるしく動いているが、先月6月は、優勝争いとは異なるところでも、さまざまな出来事が起こった1カ月だった。

所属 ライター
舩越 園子 / Sonoko Funakoshi

配信日時:2025年7月7日 12時00分

PGAツアーのCEOに就任したブライアン・ローラップ氏。その手腕にも期待が高まる
PGAツアーのCEOに就任したブライアン・ローラップ氏。その手腕にも期待が高まる (撮影:GettyImages)

メジャー大会が目白押しの昨今、米ゴルフ界は目まぐるしく動いているが、先月6月は、優勝争いとは異なるところでも、さまざまな出来事が起こった1カ月だった。

【写真】マキロイが現在、使ってるドライバーは何だ!?

ローリー・マキロイのドライバーが、5月の全米プロで「ルール不適合」と判定された騒動は、6月に入ってからも尾を引いていた。

ドライバーの事前テストの対象となった選手の氏名やテスト結果は非公開とされている。そして、その通り、やはりテスト対象となって不適合判定を受けたスコッティ・シェフラーのことは、事前には、まったく報じられなかった。それなのに「僕のことだけがリークされた」という不公平性に、マキロイは何より激怒していた。

テスト対象者やテスト結果が「非公開」と規定されている以上は、きっちり非公開ルールが遵守されるべきで、マキロイが「なんで僕だけ?」と怒りを覚えたのは、「そりゃそうだろう」とうなずけた。

もっとも、マキロイは記事を発信したメディアに対する怒りを口にしていたが、内部からメディアへ情報が漏れたからこそ、記事になったと考えるべきで、批判されるべきは情報漏洩に関わった人物(たち)ということになる。
それにしても、昨今のゴルフ界では「不公平(アンフェア)」という言葉をしばしば耳にする。

距離が長い上に、難しいコースセッティングが施されている大会で、苦戦を強いられ、苛立ちを募らせた選手が「ロングヒッターだけに優利なのはアンフェアだ」「こんな設定はアンフェアだ」と怒声をあげることも多い。だが、それは、お門違いというものである。

全米オープンでは、ウィンダム・クラークが難設定に対して怒り狂った末に、オークモントのロッカーを破壊するという奇行に走った。自分の不甲斐ないプレーを棚に上げて、戦いの舞台の一部を破壊するとは言語道断。謝罪もせずにオークモントから去り、後日、米メディアから破壊行為について問われると、「申し訳ないことをした。でも僕は前進したいと思う」という身勝手な返答を口にした。メジャー覇者でもある選手が、こんな態度を取るとは「世も末だ」と、情けなくなる。

その全米オープンでは、ゴルフ界の長年の懸案事項であるスロープレーが、オークモントの難設定とあいまって一層激化。1ラウンドに6時間近くかかったケースもあった。スロープレーがなかなか解消されない原因の1つは、プレーペースが「誰のせい」「何のせい」でスローになっているかを明確に判断することが難しいところにある。

そして、マスターズを主催するオーガスタ・ナショナルや全米オープン主催者のUSGA、全英オープン主催者のR&Aなどは、10年以上前からスロープレーに対するペナルティとして、罰打を科している。しかし、PGAツアーだけは罰打を科したケースはほぼ皆無で、罰金を科したとしても、ペナルティに関わることは非公開。それが「PGAツアーは選手に甘すぎる」と批判されてきた所以である。

しかし、そのPGAツアーが、6月下旬のロケット・クラシックから、スロープレー解消に向けて、ついに動き出した。

試合会場となったデトロイトGCにおける18ホール(前半と後半それぞれ)の所要時間、そして各ホールの所要時間を、毎日、各組ごとに集計し、PGAツアーの公式HP上で初公開に踏み切った。

組ごとの集計・発表ということで、「誰が遅いか」は依然として示されてはいないが、ある程度は「この選手のせいだな」という見当はつく。そのため、選手たちは通常以上に迅速なプレーを心掛けていた様子で、1ラウンドの平均所要時間は、決勝2日間はどちらも4時間を切っていた。

今年の春から試験的に使用を許可していた距離測定器は、プレーペースの改善に「効果あり」という分析結果が得られつつあり、近い将来、PGAツアーで距離測定器の使用が正式に認められる可能性は高そうである。また、スロープレーの現行ルールでは「警告2回で1罰打」と定められているが、下部ツアーのコーンフェリーツアーとPGAツアー・アメリカスでは、すでに「警告1回で即1ペナ」とされており、PGAツアーのオフィシャルいわく、「明らかにプレーペース向上に効果が見られる」とのこと。

それならば、この厳罰化ルールを一刻も早くPGAツアーでも採用し、「選手に甘すぎる」と批判され続けている体質を改善していただきたいと思う。そして、そうした積極姿勢を見せるかどうかのカギを握っているのは、この6月にPGAツアーの新たなリーダーに就任したブライアン・ローラップCEOだと考えられる。

これまでPGAツアーを率いてきたジェイ・モナハン会長までの4会長は、いずれもゴルフ界出身だった。だが、会長職(コミッショナー)ではなく、PGAツアー史上初めて設置されたCEO職に就任したローラップ氏は、ゴルフ界ではなくアメフト界出身だ。そして、メディアビジネスのプロフェッショナルでもある。

その意味では、ゴルファー同士の妙な忖度(そんたく)や気遣いをすることなく、旧態依然とした体質を改善してくれるのではないか。そんな期待が膨らみつつある。

文/舩越園子(ゴルフジャーナリスト)

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