ここ5年の間にスイング解析器とギアが目覚ましい進化を遂げ、300ヤードヒッターが急激に増加。「飛ばすなら曲がる」時代から「飛んで曲がらない」時代へ突入した。そんな世界のトッププロたちのスイングを、プロコーチの井上透氏が解説する。
右ツマ先を開いて、右カカトに重心を乗せやすくする
アドレスでは右ツマ先を外に開いている。こうすることで、バックスイングで右カカトに重心が乗り、インサイドから下ろしやすくなる
2017年の欧州ツアー年間王者、トミー・フリートウッド(イングランド)は、プロゴルファーには珍しい長い髪とあごひげがトレードマーク。2018年の全米オープンと2019年の全英オープンで2位に入り、メジャー勝利も近いと言われている。欧州選手らしく風の中でのコントロールショットを得意とするフリートウッドのスイングを、最先端の理論に精通しているプロコーチの井上透氏が解説する。
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フリートウッドはアドレスで右ツマ先を多めに開いているのが特徴的です。一般的には、バックスイングでの回転量をサポートするためだったり、右カカトに重心を入れやすくするために右ツマ先を開きます。バックスイングのときに右ツマ先重心で粘り過ぎてしまうと、アウトサイドからカットに入る傾向が出たりもする。だから、風に強いショットを打つために、右ツマ先を開いてインサイドから入れやすくしているとも予測できます。
左手をフックに握り、フェースターンを抑える
フックグリップで握ることで、トップのときに左手首が真っすぐでも、フェース面はその角度よりも閉じている。フェースローテーションが少ないスイングに
切り返しでは左に鋭く踏み込み、クラブを常に引っ張り続けて下ろしているのが分かります。その結果、フェースターンを抑えることができている。フリートウッドがアイアンのライン出しショットが上手いのも、フェースローテーションの量が少ないから。後方からトップを見たときに、フェースは閉まっています(フェース面が上方向を向く)。だからダウンスイングで引っ張り続けてもフェースが開かないのです。
フリートウッドはいま流行りの掌屈動作(左手首を手のヒラ側に折る動き)でフェースを閉めているわけではありません。後方からトップと切り返しを見てみると、左手首は真っすぐになっています。彼は左手をかぶせてフックグリップに握っているから、掌屈動作を使わなくても、つかまるフェースの角度を作れるのです。
クラブを引き続けているから、フィニッシュはコンパクトに
フィニッシュで右のマキロイはヘッドが目標方向に向くのに対し、フリートウッドは顔の横ぐらいの位置でコンパクトに収まる
ローリー・マキロイやジャスティン・トーマスと比較すると、フィニッシュでクラブはコンパクトな位置に収まっています。フリートウッドのように体の回転を止めずにクラブを引き続けていると、クラブヘッドは顔の横で止まりやすいのです。おそらく本人はインパクトでクラブをリリースする感覚は持っていないでしょうね。リリースするイメージを持っていると、もっとフィニッシュでクラブは回っていくはず。ヨーロッパで戦っていると、風の中でのコントロールショットがすごく大事なので、こういうスイングになったのかもしれません。
■解説・井上透
1973年生まれ。神奈川県出身。1997年からツアープロコーチとしてのキャリアをスタート。中嶋常幸、佐藤信人、米山剛などのコーチを務めた。現在は成田美寿々や穴井詩らを指導している。東京大学ゴルフ部監督としての顔も持つ。