<パリ五輪 事前情報◇30日◇ル・ゴルフナショナル(フランス)◇7174ヤード・パー71>
2021年の東京五輪へ出発する前日にコロナ陽性となったジョン・ラーム(スペイン)は、「もう遠い昔のことのように感じるけれど、あの日は悪夢だった。体調はぜんぜん悪くなかったのに、五輪に行くことができなかったのだから、受け入れるのが難しかった」と、当時を振り返った。
あれから3年。「ずっとこのときを待っていた。3年後にチャンスがあることを願っていた。長い道のりだったけれど、ここに来られて本当にうれしい」とチームスペインの相棒、ダビド・プイグと揃って笑みを浮かべる。
23年はラームにとって激動だった。4月に「マスターズ」を制し念願のグリーンジャケットを手にした。そして12月にLIVゴルフに電撃移籍し、ゴルフ界に激震を走らせた。今季はLIVを主戦場としながらメジャーにも参戦。ディフェンディングチャンピオンとして臨んだ4月のマスターズは45位、5月の「全米プロ」は予選落ち、6月の「全米オープン」は直前のLIVゴルフ大会で足の指を痛め、欠場を余儀なくされた。
それでもようやく7月の「全英オープン」で7位に入ると、前週のLIVゴルフ・ロンドンで念願の初勝利と、調子を上げて五輪へと乗り込んできた。
日曜日にパリ入りすると選手村を訪ねたという。「すごく大きくて、世界中からアスリートが集まっていた。各国の国旗がそれぞれのビルディングに掲げられて、いよいよ五輪なんだと興奮した。信じられない経験だ」と初五輪を楽しんでいる。
コースは18年にライダーカップの欧州チームメンバーとしてプレーして以来、「一度も訪れていない」という。ただ「違ったコースコンディションになるが、当時の記憶は役立つと思う」とも話す。またようやく勝利を挙げてのコース入りに「勝つことはいろんな意味で重要なことだった。良い記憶が残されている。それは僕にとってボーナスだ」と自信を口にする。
“メジャー勝利”と“金メダル”のどちらにより価値を感じるか?と聞かれると「何度も聞かれる質問。でもそれはザンダー・シャウフェレに聞くのが一番いい。彼は両方勝っている。ロージー(ジャスティン・ローズ)にも聞いてみるといい。もちろんメジャー勝利はすばらしい。だけど国を代表して戦っての金メダルは特別なもの。もし日曜に僕が勝ったら、もう一度聞いてみて欲しい」と満面の笑みだった。(文・武川玲子=米国在住)
