「一度着たら脱ぎたくなかった。勝ったその日、家に帰ってジャケットを着たまま寝た」(タイガー・ウッズ)
「これまでの人生を振り帰ったとき、グリーンジャケットは私の人生すべてだったといえる」(ベン・クレンショー)
表彰式で前年チャンピオンがその年のチャンピオンにグリーンジャケットを贈るのが慣例。名誉会員が一人増える瞬間をオーガスタナショナルのメンバーたちが見守る。昨年はダニー・ウィレットが初めて袖を通した。「ちょっと袖が長かったけど、今まで着たジャケットの中で最高だった」(ウィレット)。ちなみに、出場する選手は大会の受付を済ませた段階でジャケットのサイズを聞かれるという。優勝争いを見ながら、クラブスタッフが最も適していると思われるサイズの在庫が、表彰式に持ち込まれる。
大会期間中は、このグリーンジャケットを身にまとまった紳士をコース内で見かける。彼らは選ばれしオーガスタナショナルのメンバーなのだ。以前はパトロンが困ったときの案内役としての役割があったが、今では、彼らは多くを語らない。「グリーンジャケットについては、チェアマンしか話せないことになっていて、僕らが勝手に話すわけにはいかないんだ。本当に申し訳ない。でも、ここでのステイを是非楽しんでいってもらいたい。興味を持ってくれてありがとう」。伝統と誇り、威厳、レガシー。グリーンジャケットとはそういうものなのだ。
今年の最終日、ウィレットからグリーンジャケットを受け取るのは誰なのか。一着のジャケットに込められた思い。こんなストーリーを思い浮かべながら戦いを見届けても面白いだろう。