とはいえ、観る側からすれば、選手には、お金だけではなく思い入れを抱いて戦ってほしいではないか。そして、どうやら選手たちも思い入れがある場所で戦うときのほうが、いいゴルフができるようで、そんなふうに選手の「心」が感じられるプレーを眺めたとき、人々はその選手のファンになり、その選手はその場所、その大会のファンになる。
トーマスはCJカップの第1回大会覇者であり、その優勝によって彼は当時の自己最高となる世界ランキング3位に浮上。「だから忘れられない優勝になった」。
第2回大会覇者のケプカは、その優勝によって世界ナンバー1になった。そして「韓国は思い出の場所になった」。今大会2日目に転倒し、手術後のヒザを気づかって途中棄権せざるを得なかったことは、さぞかし残念だったに違いない。
だが、そんなケプカの心残りを引き受けたかのように、トーマスが「パスト・チャンプ(過去の優勝者)」の想いを見事に実らせ、今大会2勝目、米ツアー通算11勝目を挙げた。
単独首位で最終日を迎えたトーマスだが、終盤はダニー・リーの執拗な追撃を受けた。しかし、思い出の地で再び勝ちたいと願っていたトーマスの想いが、目に見えない力を彼に授けた。