<ヤマハレディースオープン葛城 最終日◇5日◇葛城ゴルフ倶楽部 山名コース(静岡県)◇6510ヤード・パー72>
4打差の9位タイから出た高橋彩華が、72ホール目の18番パー5で90ヤードの3打目をピンの奥から戻して入れてイーグル締め。勝負の行方はトータル8アンダーで並んだ仲村果乃、荒木優奈との三つ巴のプレーオフにもつれた。そこでも2ホールともバーディを奪って2人を振り切り、今季初優勝、通算3勝目を手にした。
劇的な展開は本人も予想すらしていなかった。最終組の3組前を回る高橋は17番を終えた時点で首位と4打差の6位にいた。宮崎晃一キャディと話していたのは「18番はバーディをとって単独4位になろう」。3打目はピンまで90ヤード。ピン奥には傾斜があり「手前からいっても転がるし、奥にいけば戻る。どっちでも寄る。練習してきた距離」と自信を持ってキャリー90ヤードを狙って打った。
ボールはピン奥1メートルのところに着弾。1バウンド目が1メートルほど跳ねると、そこからスピンバックしてカップに吸い込ませた。宮崎キャディとハイタッチをしグリーンに向かうと、カップからボールを拾い上げる。リーダーボードを見ると自分の名前が一番上にあった。
10アンダーで首位を走っていた菅が16番でトリプルボギーをたたいて後退。「誰か伸ばすだろう」と全員のホールアウトを待ったが、9アンダーの選手は出てこなかった。プレーオフに入っても「自信のある距離」で好機を演出する。1ホール目は80ヤードから2メートル、2ホール目は70ヤードから1メートル強につけて、いずれもバーディ。1ホール目で荒木がパー、2ホール目に仲村がパーで終わり、優勝が決まった。
1983年に青木功が日本勢米ツアー初優勝を遂げた「ハワイアンオープン」の18番パー5で、128ヤードの3打目をPWで直接決めた逆転イーグルVを彷彿させる“葛城の奇跡”として語り継がれそうな勝負だった。
開幕から不運に見舞われた。昨季は1勝を含むトップ10入り12回でメルセデス・ランキングは自己最高の5位。パーオン率、パーセーブ率、リカバリー率すべて1位で総合力の高さを示した。それでも納得はいっていなかった。「昨年は1勝止まりで悔しかった。年間複数優勝という景色を見たかった。年間3勝して一流といえると思う」。このオフは今までにないぐらい、周囲に止められるぐらい練習をした。主にショートゲームに時間を割き、ウェッジで5ヤードからフルショットまで距離感を身につけ、パッティング力も上げた。
「今までよりショートゲームの精度を上げるというのと、ショットのブレ幅を少なくできるように練習してきたんですけど…開幕でなくなってしまった」
充実したオフを過ごしていたが、開幕戦の沖縄に向かう矢先に「立っていられないくらい気持ちが悪くなった」と強い頭痛に見舞われた。病院で検査をしても異常は見つからない。頭痛がとれても全身筋肉痛や首が硬くなったり、筋肉に異変が起こった。試合は始まるので出場する。「当てるだけでやっていたらスイングがおかしくなっちゃいました」。ツアー屈指のショットメーカーがフィーリングを失った。
思い通りのショットが打てていなかったが、4戦とも10位台と20位台に入っていた。「オフにやったアプローチとパターでしのいでいました。今年はずっとそうですけど、パッティングに助けられています。去年と真逆のゴルフです」。今大会の優勝を含めて一生懸命取り組んだオフの成果をしっかりと出せていた。
今週も「この調子でトップ10には入れたらいいね」と宮崎キャディと話していたが、予想を大きく上回る結果を残した。「追い上げての優勝は初めてですし、自信になります」。ウィークポイントだったパッティングにも磨きがかかった。持ち前のショット力が戻れば、鬼に金棒。一流の証という年間3勝は近い。(文・小高拓)
