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鈴木愛が左ひざ痛を押して渡米前の試合に出た理由【記者の目】

鈴木愛が左ひざ痛を押して渡米前の試合に出た理由【記者の目】

所属 ALBA Net編集部
秋田 義和 / Yoshikazu Akita

配信日時:2018年5月28日 16時43分

鈴木愛、スーパーアプローチでバーディ奪取 ギャラリーの大歓声に応えた
鈴木愛、スーパーアプローチでバーディ奪取 ギャラリーの大歓声に応えた (撮影:佐々木啓)
リゾートトラスト レディス 最終日◇27日◇関西ゴルフ倶楽部(6,569ヤード・パー72)>

ギャラリーだけでなく、関係者からも何度も聞こえてきた。「何で休まないのだろう」。前週の「中京テレビ・ブリヂストンレディス」を左ひざ痛のため欠場しながらも、「リゾートトラスト レディス」で棄権せずに最後まで出場した鈴木愛に対する言葉である。「全米女子オープン」を翌週に控えた大事な時期だったにもかかわらずの強行出場だったから、なおさら疑問の声があがった。

【写真】スーパーアプローチに女王の笑顔がはじけた

54ホール回ったのは決して左ひざの状態が良くなったからではない。現に初日を終えた後、「正直あと2日は厳しい」と話していたし、ケアとしてできることも遠征先のためアイシング、マッサージ、ストレッチと最低限のものだった。欠場して味の素ナショナルトレーニングセンター(JOC認定オリンピック強化指定選手が利用できるトレーニング施設)でできる限りの治療を受けて、大一番に備えるという選択肢もあったはずだ。

それでも鈴木はクラブを握ることを選んだ。母・美江さんが「ここでできなければ、来週もできません」というように、もちろん毎週毎週が大事だという思いもあっただろう。今季3勝を挙げているいい状態を2週休むことで失いたくなかったのかもしれない。だが、それ以外の理由として、兵庫県での試合だったから、というのも少なからずあった。

兵庫県には、鈴木をずっと応援してくれている3姉妹のジュニアファンがいるのだ。それが三崎(山に立に可)十真夢(とまむ)さん、花音(かのん)さん、未優(みゆう)さん。交流が始まったきっかけは、鈴木が初めてツアーで優勝した2014年の「日本女子プロゴルフ選手権 コニカミノルタ杯」だった。

14年に関西ゴルフ倶楽部で行われた「リゾート・トラストレディス」で鈴木のファンになったという3姉妹。同じく兵庫県の美奈木ゴルフ倶楽部で行われた同年の女子プロゴルフ選手権にも応援に行き、初優勝を挙げた鈴木にサインをもらおうと待っていた。だが、表彰式などが長引いた関係で、乗る予定だった最終のギャラリーバスの時間までサインをもらうことができなかった。そのため、泣く泣く帰ろうとしたときに、鈴木の親族が三崎さんたちがサインをもらおうと待っていたことを知り、それが美江さんに伝わって、後日鈴木からサイン入りのボールが送られてきたという。

「そんなことをしてくださるプロは初めてでした。それもあってみんなで“愛ちゃん、愛ちゃん”と応援しています。試合に行けるときは、できる限り応援に行くようにしています」とは3姉妹の母の弁。一方の鈴木も、本調子でないときも頑張って兵庫県の試合に出場してきた。今年も海外メジャー「ANAインスピレーション」の翌週に兵庫県の花屋敷ゴルフ倶楽部 よかわコースで行われた「スタジオアリス女子オープン」に強行出場。見事優勝を飾っている。

それを踏まえ、鈴木の海外メジャー前後のスケジュールを考えると、全米女子オープン明けに兵庫県で行われる「宮里藍 サントリーレディス」は欠場を予定している。今シーズンの残りを見ると、兵庫で行われるのは10月の「NOBUTA GROUP マスターズGCレディース」のみ。今年は兵庫県・関西ゴルフ倶楽部で行われる今大会に出場しないわけにはいかなかった。

そして、今大会に3日とも来られるのは長女の十真夢さんのみ。学校などの都合上、花音さん、未優さんは最終日にしかこられない。そうなると、いくらひざが痛くとも初日で投げ出すわけにはいかない。鈴木は「サントリーがお休みで、次の兵庫の試合はマスターズになってしまう。だから今週頑張った部分はあります」と話している。

実は鈴木自身、小さいころに憧れの宮里藍にサインをもらい感動した記憶がある。そのため、プロになって以降、今度は自分の番とばかりにサインはできる限り応じるようにしているのである。

昨年、上田桃子は鈴木が賞金女王になったときにこういった。「これからはゴルフの成績だけでなく、プレー中の態度や精神面など、あらゆる側面から見られる選手となる。これまでのように、若手の好プレーヤーではいられない。ツアーの代表である必要がある」。最終日の18番で左ひざに一番ダメージがあるであろう、左足がバンカー、右足はラフという状況からピタリと寄せた25ヤードのアプローチ。3姉妹を含めたギャラリーに満面の笑顔で応え、グリーンに上がってくる鈴木の姿は、まさに女王のそれだった。(文・秋田義和)

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