強い追い風も吹いた。そこまでにシーズン6勝を挙げていた稲見が、この大会はまさかの大乱調。結果的にトータル4オーバー・100位タイで予選落ちした。もう1人のライバル・渋野も米国で苦戦していたこともあり、古江は“優勝”だけに集中できる状況になった。だが3日目を終えた時点で、首位との差は9打差。そして、その大きなビハインドを負って臨んだ最終日も1つ伸ばすにとどまり、トータル8アンダー・11位タイで東京五輪の道は閉ざされた。
最終ラウンド終盤。コースを歩く古江は、すでに涙をこらえることができなかった。この大事な局面で、何度もチャンスにつけながら1〜2メートルのパットを決められない不甲斐なさが、そうさせた。さらに会見の席でも、込み上げるものを止めることができない。「オリンピックは関係なしに、きょうのゴルフが悔しくて……珍しく(涙が)出ました」。本人は最初こう話したが、気持ちが落ち着くにつれ、「オリンピックのことを考えすぎて自分のプレーができなかった」、「(五輪は)ゴルフをやっていくうえで目指したい。でも、それは運もある」など本心を語っていった。
この後、10月の「富士通レディース」から一気に3勝を挙げ、今度は稲見と最後まで賞金女王の座を争った。そこでは再び敗れたものの、総合的な実力をポイント化するメルセデス・ランキングでは1位となり“女王”の座を分かち合うことになる。今月12日まで行われた米国ツアー予選会を通過し、来年は海外でも戦うことが決まった。世界の強豪が集まるツアーで、今度はうれし涙を流す姿を見せてもらいたい。
