冒頭の15番に話を戻そう。神谷とは2打差がついていたにもかかわらず、ラフから3番ウッドを握った。刻んでもいい場面だったが、「(神谷)そらがやっぱりいいショットを打ってイーグル取れる所っていうのもあったので」と、キャディに狙ってもいいかと直談判しての判断だった。
打ち直しの4打目で残した距離は約6.5メートル。この日は何度もその距離を沈めていたとはいえ、首位の座を明け渡しかねない状況。パーセーブは簡単ではないだろうと筆者は見ていた。ところが、そんな予想を吹き飛ばすようなきれいな転がりで、パーパットをカップの真ん中からねじ込んだ。
さらに、プレーオフで残した約1.5メートルのパーパットも、危なげなく沈めた。
クラブをゆっくり振り上げてからのキレのあるダウンスイングは、飛んで、そしてピンに向かっていく。ショットは申し分ない。あとはカップへ向かう“一筋”が課題だった。「ショット自体は本当に優勝争いができるくらいの調子」と北海道meijiカップ後に話していたが、その言葉通り、ショットの状態は高い水準を保っていた。
「年内にもう1回勝てたらいいな」。中盤戦では、そんなことも頭によぎったという。それでも、佐久間は自らの手で不調を抜け出した。うまくいかない理由を探し、試して、また変える。その積み重ねが、ニトリレディスでの優勝につながり、今大会でも再び勝利を引き寄せた。
思わぬ足踏みをしている間に、海外メジャー「AIG女子オープン」(全英)を制した桑木志帆にメルセデス・ランキングで大きくリードを許した。
その差を詰めるのは簡単なことではない。それでも、中盤戦に苦しんだ女王が、もう一度勝てるところまで戻ってきたことは間違いない。
15番で沈めた6.5メートルのパーパットは、その復活を象徴する一打だった。苦しみながらも、自分で探し続けた“一筋”を、今度はしっかりカップの中へと通してみせた。残りのシーズン、どこまで追い上げるのか。再び女王争いを面白くするだけの強さをはっきりと示した。(文・齊藤啓介)
