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「やらないと」→「やりたい」 30歳・幡地隆寛の日本初Vにはマインドを変える出会いがあった

幡地隆寛の初優勝の裏にあった出会いとは?

所属 ALBA Net編集部
高木 彩音 / Ayane Takagi

配信日時:2024年5月20日 07時30分

日本ツアー初Vを挙げた幡地隆寛。左は奥さんの志保さん
日本ツアー初Vを挙げた幡地隆寛。左は奥さんの志保さん (撮影:鈴木祥)

<関西オープン 最終日◇19日◇名神八日市カントリー倶楽部(滋賀県)◇6869ヤード・パー70>

日本ツアーで自身初となる表彰式を終え、笑顔で拍手をしながら記者会見の場に登場したのは30歳の幡地隆寛だ。取材陣からも大拍手と祝福の言葉が送られると「ありがとうございます!」と清々しい表情で応えた。

石川遼がパー4でワンオン成功!【動画】

プロ転向したのは2015年12月。18年まで1度も予選を通過できず苦しんだが、19年に持ち前の“飛ばし”で注目を集めていた。21年には「日本ゴルフツアー選手権」で5位、「三井住友VISA太平洋マスターズ」では初の最終日最終組で回り4位と、このシーズンに初シードを獲得した。昨年の「関西オープン」は最終日に「66」をマークし2位で終えるなど、着々と存在感を強めていた。

それでもプロ入りから昨シーズンまでの9年間は思うような結果が出ず、練習へのモチベーションは“やらないと”と自分自身で背中を押す日々が続いていた。そんな幡地のマインドを変えさせたのは、昨年の「日本オープン」と「ダンロップフェニックストーナメント」だった。

日本オープンではトータル4アンダー・3位タイで進んだ決勝ラウンドで2日間とも石川遼と同組でラウンド。この時の石川は、優勝争いを繰り広げ2位で終えている。「去年、日本オープンで石川遼さんと2日間やらせていただいて、“本気の石川遼”が見ることができた。充実した2日間を過ごせたのがプラスでした。勝ちきれなかったという悔しさも」。好位置をキープし3位タイで挑んだ最終日に「71」とスコアを伸ばせなかった悔しさがやる気を出させた。

「それと合わせて」と11月のダンロップフェニックストーナメントでは3日目にブルックス・ケプカ(米国)とラウンドした。そこでは「結果というよりも元世界一の選手に触れることができて、本当に衝撃というか…」とモチベーションを変化させるきっかけとなった。

「アイアンの球質、自分がわからないものがいきなり目の前に出てきたときの好奇心というか。『どうやったらあれができるんだろう』みたいな。日本ツアーで絶対味わえない技術を目の当たりにしたとき、自分のなかの向上心に火が着いた」。22年に一度世界ランキングで1位に立ったケプカが放つショットに心を打たれた。

その日の18ホールではケプカのプレーを全て目に焼き付けた。「そこまで自分が違うと感じたのは初めて」とこれまでの日本ツアーでは感じなかった気持ちにさせられる。「多分ゴルフを始めたての子がプロゴルファーに触れたときぐらいの次元の違い」と圧巻させられた。

いままでは「何を目標に練習してもいいのかがあまりわからないというか、日本ツアーで優勝するのに何を練習したらいいのかわからない」と、やみくもに暗中模索を続けてきた。それがケプカを見て自分と比較し、「ようやく目指す対象というか、自分が近づきたいと思う選手が目の前に現れた」と明確な目標ができ、練習を「やらないと」から「やりたい」にマインドチェンジ。エンジンをかけることができた。

幡地はオフシーズンに自分が目指すショット力を手に入れるために励んだ。そして迎えた今シーズンの3月にはアジアンツアーとオーストラリアツアーの共催大会「ニュージーランドオープン」でプロ初優勝を遂げた。「日本でも勝ってくれ」と周りから背中を押されていたが、約2カ月後に日本ツアーで初Vを挙げることができた。

表彰式では妻の志保さんがうれしさのあまり号泣。その姿を見て「また泣いているなって(笑)」と言いつつも、アジアンツアーにも同行してくれて日頃から支えてくれる存在に「心強さ」を感じ、感謝の意を表した。

今大会を終えて落ち着く時間もなく、20日(月)は「全米オープン」の日本予選会に出場する。「本当は今からちょっと練習したいんですけどね」と窓の外を見るが、ここは体力温存を選択。その後もサインを書いたりなど優勝者としての役目を果たした。いざ海外メジャーの切符をつかみに行く。

会見の最後には「4日間セーフティに考えるゴルフができた結果、優勝できたということにしっかり自信を持って、今シーズンも戦っていければなと思います」と、残りの試合への意気込みを示す。さらにモチベーションを上げた幡地がツアー2勝目へ挑んでいく。(文・高木彩音)

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