プロもアマもシャフトが軽くなった
典型的な例をあげてみよう。昨年12月に発売以来、大ヒットとなっている『XXIO X(テン)』は文字通り『XXIO』シリーズの10代目にあたる。フレックスRシャフトの重量は40gだ。これが4代目の『ALL NEW XXIO』だと、同じフレックスRが48gになる。12年かけて8g軽くなったわけだ。
最近のモデルでは、キャロウェイの『ROGUE STAR』ドライバーに40g台と50g台の二種類の純正シャフトがラインナップされているのが目を引く。これまでであれば、純正シャフトは50g台だけだったろうが、より軽いシャフトのニーズを見込んでいるのだろう。カスタムシャフトにも定番の60g台だけでなく、50g台をラインナップするメーカーが増えてきた。
古い話で恐縮だが、かつてパーシモン製ドライバーの時代は100g以上のスチールシャフトが装着されていた。タイガー・ウッズがマスターズで初優勝した97年、そのドライバーはスチールシャフトのダイナミックゴールドで110g以上あった。
同じ頃、日本ではブリヂストンの『TOURSTAGE』ブランドが人気だったが、装着されていた『TD-03』というシャフトは、80g以上もあった。その重さを純正シャフトとして誰もが使用していた時代があったのだ。
それが軽量化し始めたのは、2000年代半ば、当時PGAツアーに参戦していた丸山茂樹が60g台のシャフトを使いはじめてからだろう。「プロがそんなに軽いシャフトを使うなんて」と驚きを持って迎えられたその選択は、今となってはごく当たり前に定着している。現在は、海外の選手もより軽いシャフトを使う選手が増えてきており、超ロングヒッターのダスティン・ジョンソンでさえシャフトは60gだ(※フジクラ『SPEEDER 661 EVO2.0 TS』)。
なぜシャフトが軽くなっていくのだろうか。国内においてはその大きな理由がゴルファーの高齢化だ。熱心にゴルフを楽しむ人が多かった団塊前後の世代が、体力が落ちてきた分をクラブの軽量化で補うのだ。軽ければ、パワーが落ちてきても扱いやすいし、ヘッドスピードがアップする効果も見込める。
ところが、それでは体力に優れたツアープロのシャフトが軽くなったことの説明がつかない。現在は、タイガー・ウッズでさえ60g台を採用することもある。デビュー当時からシャフトの重量は半分程度になった計算になる。また、80g→70g台や70g→60g台といった具合に軽いシャフトを選んでも、アイアンのシャフトは重量級のまま変えないという選手が大半だ。これはどう考えれば良いだろうか。
シャフト軽量化はドライバーを使いこなすための工夫
ヘッド重量が同じでも体積が大きくなると、その分、スイングにはパワーが必要になる。重量がより遠くに配分されるからだ。かつての倍近く大きくなった現代のドライバーは、圧倒的にやさしくなった反面、その大きさゆえに、振りきりにくいところがある。これは、飛距離にもミスヒットへの強さにも優れた現代のドライバーの、数少ないデメリットと言えるだろう。
現代のドライバーの中でも、国内メーカーの方が比較的振りやすいモデルが多い。同じ460ccでも重量をヒール側に寄せて、ヘッドが返りやすくなっているのだ。投影面積の大きい海外メーカーのドライバーと比べて、慣性モーメントは小さくなりがちだ。このあたりは、より力のない日本人ゴルファーを対象にしているのがわかる。
現代のドライバーを振り切りやすくなるように工夫したのが、最近ツアーで採用されることが増えた短尺化だ。188cmもあるジミー・ウォーカーが、42インチのドライバーを使ったり、リッキー・ファウラーが43.5インチにして好成績を上げたことで注目されている。昨シーズンの石川遼も一時期トライしたようだ。
周辺に重量を配分して慣性モーメントを高めた現代の大型ヘッドは、打点のブレに強さがある一方、振り切るのには力が必要になる。それを補うために、シャフトを軽量化し、振りやすさを担保したモデルが増えてきているのがここ最近の傾向だと言えそうだ。
道具の進化に伴い、これまでのクラブ選びのセオリーが通用しないケースが増えてきている。実際に打ち比べて、結果や振り心地を試してみるのがいいだろう。先入観にとらわれず、自分のスイングに合った振りやすさを追求することが、良い結果につながるだろう。