日本では、60度を超えるハイロフトウェッジを使うゴルファーはプロでも少ない。ウェッジを3本入れるなら、その内訳はPWとSW、その間を埋めるAWが一般的だ。ロフト角のピッチで言えば、48度（PW）、52度（AW）、58度（SW）といったところだろうか。アイアンセットのPWのロフト角が立っていれば、50度に56度を組み合わせる場合も多いだろう。

　一方、海外ではウェッジ3本を入れるとき、PWとSWをいれたら、その下に60度を超えるロブウェッジを入れるケースが多い。代表的なのは、タイガー・ウッズで、PWに56度のSW、そして60度のロブウェッジを組み合わせていた。PWとSWのあいだにウェッジを入れる日本とは、同じ三本でもセッティングの内容が違うのだ。

　日本のウェッジ3本の起源と言われているのは、言うまでもなく尾崎将司だ。PWとSWのあいだに、そのギャップを埋める「P/S」を入れたのは有名な話で、現在、定着しているAWもそれに由来する。日本では、SWの下により大きなロフトのウェッジを入れるのは浸透していない。

　日本ではプロであっても、60度以上のハイロフトウェッジを使うことが少ないのは、こうしたウェッジを使うアプローチを要求する状況が少ないことが一番の理由だろう。それに加えて、60度を超えるようなロフトの大きなクラブは、扱いが難しく、距離のバラつきが出やすいのも大きい。

　ロフトが大きくなるほど、ヘッドの重心は低くなりやすく、フェースがより開くように動きやすい。ボールもフェースの上を滑りやすくなるため、ちょっとした加減でインパクトのブレが大きくなるのだ。もちろんミスヒットにも弱くなる。試しに60度ウェッジを使ってみて、同じように打っても、ボールが上がりすぎたり、思ったより上がらなかったりして、弾道が揃わない経験をしたゴルファーも多いのではないだろうか。

　ショットメーカーとして誰もが名前を知っている、あるツアープロに話を聞いたところ、彼は52度でフルショットすると、ほとんど1ヤードの狂いもなくボールが揃うという。しかし、60度になると、同じようにフルショットしても２〜３ヤードの誤差が出るということだった。プロでさえ、そうなのだから、やはり60度以上のウェッジは簡単ではないのだ。