ジャパンゴルフフェア2021でお披露目となったフジクラの新たなパター用カーボンシャフト『MCパター』。前作までの硬軟2種類のフレックスに加え、今回新たにさらに硬い「X-FIRM(エクストラファーム)」が加わり、計3種類となった。ギアに知見の深い奥嶋誠昭プロと石井良介プロの師弟コンビに、その性能を検証してもらった。(text by Kazuhiro Koyama)
シャフトの違いで、パッティングストロークは変化する!
5色展開だった前作から一新し、モノトーンに統一した新デザインを採用した
3つのフレックスを試打してみて、石井プロと奥嶋プロが共通して指摘したのは、カーボン素材ならではの打感の良さ。新しい『MCパター』は、さらに材料選定と独自の設計で、3フレックスそれぞれに特徴をもたせながら、心地よい打感を実現している。それが、ゴム特有の振動減衰性を活かし、衝撃吸収を最大限に発揮するテクノロジー、「Rubber Composite Technology(RCT)」だ。カーボンとゴムを複合化させることに成功し、インパクトでの振動をよりクリアなものにしている。
さらに、フジクラおなじみのカーボンシャフト『MCI』や『MCH』に採用されている「Metal Composite Technology(MCT)」を搭載。先端に金属管を、手元に銅箔シートを積層することで最適な重心調整と滑らかな剛性分布、手元の重量感を兼ね備えるフジクラの特許技術だ。3つのフレックスそれぞれに、適正な挙動を実現しているのは、これらフジクラが持つカーボンシャフト設計の知見と技術によるところが大きい。
振動減衰性を表したグラフ。一般的なスチールシャフト(青)に対して、「MCT」と「RCT」を備えた『MCパター』の振動は非常に小さいのがわかる。
さらに奥嶋プロには、パッティング診断システム「SAMパットラボ」を使って、石井プロのストロークをシャフト別に測定してもらった。「SAMパットラボ」は超音波計測技術を使って、パッティングストロークを高精度で解析する機器だ。これを活用することで、パターのシャフトが変わることで起きる、ストロークの変化を把握することが出来る。
「SAMパットラボ」を使って、パッティングストロークの計測を行う石井良介プロ
石井プロの測定結果から、奥嶋プロは興味深い点を指摘してくれた。「パッティングのような小さな動きでさえ、シャフトが変わると明らかにストロークの変化が見られます。具体的に言うと、シャフトが硬くなるほどストロークはより直線的になり、逆に軟らかいといわゆるアークを描きやすくなります」(奥嶋)。パターヘッドの形状によって、こうしたストロークの変化があることは、ギアマニアにはよく知られるところだが、シャフトの違いによっても、有意な差があるようだ。
「さらに、3つのフレックスで入射角に顕著な違いがあります。最も軟らかい「SMOOTH」が一番アッパー軌道になり、ロフト角が増えるような動きになります。例えば、ダウンブロー傾向が強い人なら、軟らかい「SMOOTH」を使って、ボールの転がりを良くすることもできそうです。逆に、硬いとヘッドは動きづらく、安定した入射角でインパクト出来ます。これは、ヘッドの挙動が大きくなりやすい大型マレットなどのパターと組み合わせると、操作性の向上が期待できそうです」(奥嶋)。
パター用カーボンシャフトの可能性を強く感じたという石井プロと奥嶋プロ
測定を終えた石井プロに、3つのフレックスをどう選べばよいか聞いてみた。「軟らかいと、ブランコのようにストロークの“間”をとりやすく、リズムが悪い人などには合いそうです。「SMOOTH」はシャフトがしっかり動くので、ショート気味の人がもうひと伸びの転がりが欲しいときにも良いでしょう。自分でストロークを管理したい人は、「X-FIRM」のような硬いシャフトがおすすめです。遊びがなく、その分挙動は鋭敏になりますが、操作性は一番でしょう」。
もっとも、石井プロが一番打ちやすく感じたのは、中間の「FIRM」だという。「軟らかいとゆったりしたテンポに、硬いとクイックになりがちです。その中で「FIRM」が一番、自分のストロークにマッチした感じがしました。私は、ダウン以降での加速度合いが強く、シャフト負荷がかかりやすいタイプなので、軟らかいとパンチが入るリスクがあります」。ショート気味のゴルファーに恩恵がありそうな「SMOOTH」の転がりの良さも、人によっては合う合わないが出るということだ。
「この3つのフレックスを打つと、多くのゴルファーは好き嫌いがはっきり分かれるのではないかと思います。だから試してみて自分がストレスなく扱える硬さを選ぶのが、良いパフォーマンスを出すコツですね」と石井プロはアドバイスしてくれた。シャフトの硬さにこだわれば、パッティングのパフォーマンスはもっと向上できるはずだ。