アメリカで腕を磨いたチャーリー高沖「すごく簡単」
筆者 タイトの『T』シリーズ以来って、過去最高に近い衝撃ってことですよね?(そんなに評価してたんだ…)2人共もちろん褒めてましたけど、難しいのは、取材時に前作の『APEX』と比較してしまったことなんです。比較相手が完成され過ぎてて、中々そこまでの衝撃は難しかったのかなと……。
筒 ウソ!? まぁ、確かに前作の『APEX』も前々作から、ずっとアメリカではベストセラーでしたから、言いたいことは分かりますよ。コスパの良さが異常でしたから。そう言えば、今週の開幕戦のダイキンでも、あのアイアンを替えない上田桃子プロが『APEX』になりましたよね? 上田桃子プロは、ずっと前々作の『APEX』だったから、かなりの事件ですよ。
筒 やっぱり。本当、昔は軟鉄鍛造がどうとか、ステンレス鋳造は安物だとか、色んなこと言いましたけど、タイトの『T』シリーズ以降は全く過去の価値観になりましたよね……。複合構造でミスに強く、打感まで良くなって何か問題?って感じ。新しい『APEX』は製法とか素材の概念を飛び越えて、一気にワンランク上のフィーリングに行きましたよね。
筒 「AI設計で打感がワンランク上」
筒 そうなんですけど、もうワンランク上の上質さ。前作の『APEX』はAIでフェースを設計したわけじゃないでしょ? そのせいか、新作は【インパクト以降まで分厚くヘッド内部から押す】打感です。
筆者 ………。(万人に伝わる?この表現……)う〜〜ん、何かと比較するとか、もっと分かりやすく話してくださいよ!
筒 !!!(何で気づかない?)長岡さん、去年出た『X-FORGED CB』打ったでしょ? あのモデルからステンレスフェースになったのに、後ろのタングステンでめちゃ分厚く押す打感、体感したでしょ? 『X-FORGED CB』の歴代モデルは一枚板の軟鉄鍛造でしたが、ステンレス鋳造フェースになって硬くなるはずが、表面はソリッドでも深〜く押す打感になったでしょ?
筆者 ……。(いや、分かりづらい…)で? 昔から、「打感でメシは食えない」って言うプロもいますけど、打感は好みの範疇でもありますよね? それって性能は関係します?
筒 「ボールの飛び姿にムダがない」
筆者 う〜ん……、まぁ『X-FORGED CB』の方がコンパクトな顔ですし、そっちの方が理由として大きいですが……。『APEX』のその【中から押す】ってヤツ、タングステン・インナーコアの影響ですよね?
筒 おそらく。で、ボクや多くのアマチュアにとっては、『APEX』の方が合ってきます。基本、インパクトだけ加圧したりせず、サラッとスイングのフレームの中でインパクトは通過点になりますよね。そういうタイプには『APEX』の中から押すフィールだと、インパクト後の通過に関してもいい具合に安定していく感じになります。
結果、飛び姿にムダがない。初めて打った時から、飛距離とかじゃなく、球の飛び姿に惚れました。ボール初速、打ち出し角、スピン量すべてにムダがなく、落ち着いた球で安心してずっと見てられる。これ、インパクトで変に加圧したり、細工が入ると球が途中で吹き上がったり、風に弱かったり、途中でカーブしたりしますから。(チラッ)
筆者 ……………。(アレ!? ディ、ディスられてる???)
筒 タングステンの量が例えば、前作の5Iは17gだったのが、新作は40gでしょ? ここは、ゴルファーのスコアアップのために確実に使われてるなぁ…と感じますよ。あと、7Iロフトが30.5°というのも絶妙。ちょっと飛ぶけど、飛びすぎませんし。
筆者 そこね、ボクはもったいないと思うんですよ。だって、こんなに凝った複合構造で、タングステンの量も増やして上がるなら、もっとロフトを立てられたはずなのに……。飛び系をやさしく打たせる方法だってあったはずでしょ???
筒 「ちょい飛び系。30°以上ならすくい打ちになりづらい」
筆者 いや、でも、3機種もあるんだから、一番やさしい『APEX DCB』とかは7Iロフト28°とか、27°でも良かったんじゃないかな……と。真ん中の『APEX』が30.5°で、一番寝た『APEX PRO』が33°ですよ? 真ん中の『APEX』と『DCB』は差が0.5°しかないじゃん! せめて2.5°ずつ違う28°くらいにしないと……。
筒 ゴルファーのスコアを第一に考えたら当然でしょ。日本では飛び系アイアンが一般化しましたけど、海外は地面も硬いし、やっぱりキャリーの最大化を基本に合理的に考える人が多いと思います。それに、立ったロフトが視覚的に引き起こす、ゴルファーの負の反応もあります。無意識にすくい打つから、飛び系を買ったのに全くロフトを活かせず飛ばなくなる人も多いんです。
筆者 『APEX』の30.5°、『APEX DCB』の30°でも、必要十分な距離が出るってこと?
筒 もちろん。すくい打ちしないから、スイングが壊れない。サラッと力感なく振って無理せず上がると【余裕】が出ます。欲にまみれた、【負の力みスパイラル】の誰かとは真逆なんですよ。(チラッ)そうなると、ますます結果も安定する方向へ行くのは分かりますよね?(チラッ)
筆者 (ムカッ)でも筒さん、タングステンがこれだけ増えて低重心化したら、スピン量が減りませんか?
筒「タングステンは【安定】に使われた?」
筆者 でも、「弾道にロスがなく、風に強い」ってことは、低スピンってことじゃないの?
筒 最適スピンであって、極端な低スピンでは断じてないです。地面への落下角も大きくて止まりますし。タングステンは、こういう最適弾道を生み出すための、タテの入射角の安定にも使われてる気がしてならないです。それが、モデルによって最適化されてる感じ。モデル毎にタングステンの使用量が違うはずです。
でも、一見マッスルバックに見えて、実は中空構造の『APEX PRO』にもタングステンがっつりですが、中・上級者向きなので操作性があるのも不思議……。3機種を打つと、それぞれが誰向きなのか?タングステン量の違いもなんとなく振り味から違うんだな……と想像できますよ。総じて言えるのは、シリーズ全部【再現性】が高い。
筒 やっぱり、タイトの『T』シリーズが出てから、アイアンの設計って各社一気に加速しましたよね。その中でも、キャロウェイはちょっとやり過ぎなくらい、突き抜けてます。「普通、この値段でここまでやりますか!?」って……。コスパモデルで性能だけじゃなく、フィーリングまでやられたら、他社はキツイですよ……。
だって、やってることが全部ヘッド内部に隠れてますし、見えないところまでAIで設計してて、それが一般のお客さんには理解されないかもしれない確率大なのに……。あと、キャロウェイは、中空構造でも安易に「ウレタンフォーム充填」という手段を取らない点にも好感が持てます。ミスに強く作っても、打感はボケさせない信念を感じます。
ほら、どうしても国内女子プロの使用率の高さとかから、「ウッドのキャロウェイ」という印象が強くなりがちじゃないですか。それも間違いではないんですけど、『APEX』を打っちゃうと、いやいや「アイアンのキャロウェイでしょ!」って言いたくなります。コスパを優先するゴルファーが選ぶモデルなのに、凝り方が異常です……。
筆者 ………。(アナタの気に入り方も異常です!)
Text/Mikiro Nagaoka