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樹脂インサートの金字塔、オデッセイ【ホワイト・ホット】20年目の復刻。なぜ、今も愛されるのか?

オデッセイの初代『ホワイト・ホット』は2000年の発売。時を経て、今秋『ホワイト・ホットOG』が20年目の復刻。このインサートパターが四半世紀近く愛され続ける理由とは?同社・寺門氏にじっくり話を聞きました。

配信日時:2020年11月13日 10時00分

“国民的人気”を誇る「ホワイト・ホット」が20年目の復刻!
“国民的人気”を誇る「ホワイト・ホット」が20年目の復刻!

「樹脂インサート」なら何でもいいわけじゃない

初代『ホワイト・ホット』インサート

初代『ホワイト・ホット』インサート

オデッセイが初代『ホワイト・ホット』の発売から20年の時を経て、この秋『ホワイト・ホットOG』を復刻。同社の今日の隆盛を牽引し、日本のゴルファーの大半が使用してきたこの「樹脂インサート」は、なぜ長きに渡って愛され続けるのか? キャロウェイゴルフでオデッセイ担当を長く努めた経験を持つ寺門広樹氏はこう話す。

「『ホワイト・ホット』インサートをアイアンに例えると、軟鉄鍛造のマッスルバックやハーフキャビティと同じ位置づけになるのではと思っています。多くの人がその打感・打音、ボールのスピードなどに慣れ
親しんで、定番化されていきました。

いろいろな素材や加工を施したテクノロジー系のインサートも開発してきて、特に『マイクロヒンジ』系のインサートは、ボールに初めから順回転を与えてコロがりを良くしますが、それらは今どきのディスタンス系アイアンのようなイメージ。いずれにしても、全てのインサートのベースとなり、開発のベンチマークとなったのが『ホワイト・ホット』。

ボールのカバーと同じウレタン素材同士が衝突すると、ソフトフィーリングで反発性がよく、ボール初速が出やすくなります。このフィーリングの良さが2000年台に多くのゴルファーの“基準”となったことは大きく、現代のツアープレーヤーの多くもこの『ホワイト・ホット』の打感・音・初速などが基準になっていますね」(寺門氏)


この樹脂インサートの“金字塔”が生まれた歴史を振り返ってみよう。
ストロノミックの削り出しだった、当初の『ロッシー1』

ストロノミックの削り出しだった、当初の『ロッシー1』

キャロウェイオデッセイを傘下に収めたのが1997年のこと。当時も樹脂素材を使用して『ロッシーI』『ロッシーII』でヘッド全体を「ストロノミック」という樹脂素材を削り出しで使用していた。その後、この素材をインサートにも使用。

振動吸収に優れた「ストロノミック」は硬い2ピースや3ピースボールが主流となりつつあった時代にピッタリだった。打感だけでなく方向性にも優れていて、それまでの摩擦係数の低い金属フェースではボールがフェース上で滑りやすいのに対し、樹脂製のストロノミックは摩擦係数が高く、滑ることなく思った方向に転がしやすかった。

「打感が軟らかい糸巻きボールの時代は、金属系(一体型)のパターで打っていました。でも、2ピースや3ピースなどフィーリングが硬いソリッドボールにシフトすると、金属系のパターでは打音が高くて弾き感が強く、ツアーの高速グリーンでは飛びすぎるのが不安で打てなくなってしまう。

そこで『ストロノミック』の樹脂インサートの衝撃吸収性が機能したんですね。でも、ストロノミックにも問題がありました。衝撃を吸収するということは、反発も少なくなるということ。ボール初速が出ないため、思ったよりショートすることも多かったんです」(同)

創業者イリ―・キャロウェイの一言が全てを変えた。「ボールのカバーと同じ素材にしてみたら?」

偉大な一言とレガシーを残し、2001年に逝去した、創業者のイリー・リーブス・キャロウェイ

偉大な一言とレガシーを残し、2001年に逝去した、創業者のイリー・リーブス・キャロウェイ

20世紀も終わりに近づいた頃、キャロウェイの創業者である故・イリー・リーブス・キャロウェイが何気ない一言を発した。「ボールのカバーと同じ素材にしてみたら?」。ここからオデッセイの開発陣は、ストロノミックとは異なる樹脂、ウレタンインサートの開発に着手。結果的に、この一言がオデッセイの金字塔への入り口となった。

「ボールは飛ばすことが大きな目的のものであるため、ウレタンカバーの素材も反発力は充分。異素材をぶつけるとエネルギーロスが生じるところ、同じウレタン素材だと、インパクトでのエネルギーダウン率も低く抑えられる上、フィーリングもソフト。もちろん、ストロノミック同様に摩擦も高く、方向性もいいんですね」(同)
オデッセイパターで最強の座をほしいままにした、アニカ・ソレンスタム

オデッセイパターで最強の座をほしいままにした、アニカ・ソレンスタム

ここに、ボールと同じ白いウレタン素材の“ホワイト”と、最新を意味する“ホット”を組み合わせ、【ホワイト・ホット】インサートが誕生した。2000年に発売されると、そのソフトな打感と独特の心地よさを持つ打球音、転がりのいいボール初速に世界のゴルファーは虜になった。当時のことを鮮明に覚えている人も多いに違いない。(偽物や真似をしたパクリ商品も世の中に溢れた…)

同時に、2つのボールサイズのアライメントが並ぶ『2ボール』も多くのプロゴルファーが愛用。アニカ・ソレンスタムも『ホワイト・ホット 2ボール』を使用して勝ちまくり、賞金女王、最強女王の名を轟かせ、日本でも大きな話題となった。この辺りは、キャリアの長いゴルファーには説明不要だろう。『ホワイト・ホット』を何本も所有、いや、使い続けている人もまだまだ多いはずだ。

20年連続、世界のツアーでオデッセイは使用率1位

使用率はずっと1位

使用率はずっと1位

ウレタンインサートの【ホワイト・ホット】登場以来、プロを含めた世界中のゴルファーの“基準”となったオデッセイパター。そのツアー使用率は圧倒的だ。世界のメジャーのツアー合計使用率は2000年からずっと1位。国内男子ツアーでは2004年からずっと1位。国内女子ツアーでも2013年からずっと1位を継続している。
オデッセイの歴史とは、インサート改良の旅路です…

オデッセイの歴史とは、インサート改良の旅路です…

だが、オデッセイの20年の歴史は、インサートの改良の歴史でもある。同社では常に【ホワイト・ホット】を超えることが全てのインサート開発の“目標” となっており、2004年には金属を打面に被せた【ホワイト・スチール】を出した。2011年の【ダマスカス】インサートも同様の金属を被せた形状だ。

この金属+ウレタンという組み合わせは、代々追求が進み、2015年の純回転を目的としたテキスチャーを付けた【フュージョンRX】インサートも記憶に新しい。純回転という意味では、2017年に金属製のヒンジでより純回転をかける【マイクロヒンジ】以降にもつながっている。
2000年からの20年間で市場に出てきたインサートは、全17種類。だが、こと国内男女ツアーでは、未だに【ホワイト・ホット】インサートが基準だ。現在も国内男女のオデッセイパターユーザーのうち、なんと64%の使用率を誇っており、新作を投入しても「インサートは【ホワイト・ホット】に替えて」と選手から言われてしまうことが多いのだとか。

『ホワイト・ホットOG』は何が新しいのか?

左が新しい『ホワイト・ホットOG』。右の初代と比べ、精密なミーリングでシャープな美観になっています

左が新しい『ホワイト・ホットOG』。右の初代と比べ、精密なミーリングでシャープな美観になっています

オデッセイの使用率の高さについて、寺門氏が続ける。

「プロでも“ここぞ”というパットでは、プレッシャーがかかって打ち切れなくなったりするものです。そういう時でも『ホワイト・ホット』インサートは、反発が程よくあるから助けてくれる、球がコロがってくれる、といった評価をよく聞きました。

そしてもう一つ。フェース面をくり抜いて軽いウレタンをインサートしているので“キャビティ効果”があるんです。慣性モーメントが大きくなりミスに寛容なこともあって、どんどん広まったのでしょうね。今も、自分のパターに『ホワイト・ホット』インサートを入れてほしいという選手は多いです」(同)


筆者も新しい『ホワイトホットOG』を打たせてもらったが、初代よりも打球音がやや大きく、その点から「もしかすると、インサートが薄くなった?」と想像したのだが、厚さは同じとのこと。そして、初代との違いが明らかだったのは、その見た目。精密ミルドでバキッとシャープな印象が与えられ、ヘッド重量も当然初代とは異なる。

20年前のものより現代風に重量を増し、ソールのトゥとヒールに2つのアジャスタブルウェイトが配置された。ちなみに、『OG』は『Old Gangster(古き良きもの)』を意味する。また、初代『ホワイト・ホット』は使用するうちに打点の塗装がザラつくなどの経年劣化が見られたものだが、復刻された『ホワイト・ホットOG』はそういった心配もない。

また、当初『ホワイト・ホットOG』は日本のゴルファー向けに企画されたものだったという。しかし、世界中のゴルファーに親しまれる『ホワイト・ホット』のこと。グローバルモデルに昇格し“日本発・世界行き”のパターだった。
ツアーボールの素材・構造が変わらない限り、『ホワイト・ホット』は永遠です…

ツアーボールの素材・構造が変わらない限り、『ホワイト・ホット』は永遠です…

インサートの進化は、ボールの進化とも歩みを共にする。1990年代後半に糸巻きボールがツアーから消え、硬い2ピースなどを経て、2000年過ぎからウレタンカバー3ピース、4ピースボールとなって現代に至る。振り返れば、タイトリスト『プロV1』の初代が登場したのも2000年のことだ。

であるからこそ、筆者はこんな想いを強くする。今後ツアーボールの素材や構造に革新的な変化が訪れない限り、【ホワイト・ホット】は今後20年も「樹脂インサートの金字塔」の地位を守り続ける可能性が高いだろうと。

なぜなら、パッティングの距離感だけは、弾道計測器ほかデータ分野が進化しても、本質的には人間の“直感”がものを言うものだから。どれだけ時代を重ねても、スコアに最も影響するのは、【自分の思い通り】が実現する、フィーリングに優れたパターに他ならないと思う。

Text/Mikiro Nagaoka

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