ウェッジ恐怖症のアマ・藤田さんが迫る!
PGAツアープロの約60%近くが使う『ボーケイ』シリーズにとって、「操作性が上がった=プロ好み=アマには難しい」といった、マッスルバックと同様の印象を抱かれかねない。アベレージゴルファーの筆者が体感したのは、あくまで“球の”コントロール性アップ。「SM8はSM7より意のままに球を操れる=やさしい」と言いたい。これは全ての人に体感できるのか? ウェッジが苦手な人にも試してもらうことにした。
平均スコア95のアマチュア・藤田さんは、平均80を目指して自らの成長の記録「へっぽこリーマンゴルファー上達の道」を綴る人気ブロガー。時間もお金もないサラリーマンだからこそ最短距離で上達する意欲は強い。そして、上達の一番のカベが【ウェッジ恐怖症】とあって、今回の企画に適任だ。
指南役として、タイトリストの担当者にも来てもらった。対応してくれたのは、アクシネット ジャパン インクの『ボーケイ・デザイン』ウェッジ担当・黒野氏だ。巨匠、ボブ・ボーケイの哲学を踏襲する専門家だが、アマ藤田さんに「素朴な疑問でもいいので、何でも聞いてください。いまお使いのウェッジは、なるほど……」と、黒野氏は藤田さんのウェッジを見るなり言葉を失う。
「自分のウェッジはミスが怖くて、普段グリーン周りは7Iの転がしほぼ一択です。地面に弾かれてトップしてオーバーが多いんですよ……。本当は、プロみたいにフワッと上げたり、スピンの効いた球でカッコ良く寄せたいんですが、怖くて転がすしかなくて…」(藤田さん)
ボブ・ボーケイがいつも言うのは、【“Bounce is Your Friend”=バンスは友だち】だということ。ここからは、少しソールの使い方を含めてのアドバイスですが、一番大切かつ、全てをやさしくするポイントを言います。ハンドファーストではなく、地面に対してシャフトを垂直に近い状態で構えましょう。傾けていいのは【拳一つ分左くらい。約7度のハンドファーストまで】です。これだけで『SM8』ウェッジを十徳ナイフのように、様々な厳しい場面で活用できるようになりますよ。7Iの転がしだけに頼る必要はないです」(黒野氏)
「えっ! ハンドファーストの方がスピンはかかるのでは?」
黒野氏が諭す。「ウェッジを含むゴルフクラブは、シャフトを垂直にした状態で本来の性能を発揮するように設計されています。つまり、ウェッジはその状態ではじめてバンスを活かし、ソールを滑らせ、適正なスピンをかけられる。藤田さんの構えは過度なハンドファーストで、ウェッジのロフト角が7Iよりも立ってしまっているような状態です。また、ソール後方が地面から浮いてしまい、すごく刃が刺さりやすい。
接地は刃からボールの赤道をガツン!ではなく、ソールの後方から着陸するイメージ。飛行機が着陸するとき、機首を上げてやさしく後輪から降りますよね? あのイメージです。それに、この短い距離でウェッジとしてのスピンをかけるには、物理的に45度以上のロフト角が必要となります。最初は慣れないボール位置や構え方に違和感があると思いますが、【垂直に構えればソールが滑ることを体感できる】はずです」。
「すごく気持ちいい!ただ、ボクの以前の右足寄りに置く打ち方とSWではランも長く出ていたため、新しい打ち方と『SM8』の58度では、同じ振り幅でもだいぶ距離感が変わります。ピンをショートしました」(藤田さん)
花道から45ヤード、黒野氏は「試しに今度は54度の『SM8』で同じ振り幅で打ってみてください」。手渡されて1球目、スピンのかかった球で、ワンピン手前に着弾した球がキュッとピン横についた。
▶タイトリスト『ボーケイSM8』のフェースに球が激乗りする理由
黒野氏はかぶりを振る。「そう思う方が多いです。プロは確かに熟練の技術をもっていますが、特殊なことはしていませんし、道具も市販のものと変わりません。スピンで大切なことは【ソールを滑らせて加速させ、ボールがフェースに乗っている時間を長くして、摩擦を増やす】こと。フェースにボールを長く乗せるには、適切な構えと自分に合ったソール選びが大切。特別な打ち方をしなくてもボールを止められるんです」。
藤田さんは「てっきり、プロのスピンは、フェースをナナメに駆け上がらせている? とか想像していました…。たしかに、ソールが滑るとボクでもフェースにボールが長く乗る感じがしました。今までは弾いている感じだったのに…」と話す。
「ベアグランドでも、ソールが滑れば怖くない」
ところが、怖くてたまらない様子の藤田さん。「開くとさらに刃が浮きますよ? トップしませんか!?」と、怯えつつ打つ。結果、フワッと高く舞い上がった球がピン手前に着弾、少しランは出たがワンピン以内に。「えぇ〜〜、この厳しいライからあんな球って出るんですか? さっきの球がウソみたい!」と、信じられない様子。
黒野氏が説明する。「ベアグランドは地面が硬いので、ソールが弾かれるのは事実。でも、ソールが滑ればライは関係ありません。それに、刃が浮くのは、ソールの出っ張り部分であるバンスが効いている証拠。バンスは地面に潜り込まずに滑らせる働きとして役立つもので、構えた時に刃が浮くことと、トップする結果はまったく無関係なことが分かると思います」。
▶トッププロたちは、『SM8』の第一印象をどう語った?
『SM8』の特徴は?
▶『SM7』と『SM8』の違いを藤田寛之はこう熱弁!
聞きたがりの藤田さんだが、さすがに技術的なワードに若干混乱気味。やはり関心があるのは、【自分のプレーをどう改善してくれるか?】に尽きる。藤田さんは「ボクに最適なソール形状はどれですか?」と、既に『SM8』の購入意欲満々で、絞り込みに入った。次ページでは、一見難しいソール選びの過程をみてみよう。