写真/J.J.Tanabe ※本特集に掲載したゴルフボールや素材は試作品(発表前に取材)
【第1章】ニュープロV1を知りたければ、タイトリストの“哲学”を知れ。
すでにご存知かもしれませんが、我々のボール事業はこの地に住んでいたフィル・ヤングという一人の男から始まったものです。彼は浴槽のゴム栓などを加工する会社を経営していましたが、ある時、ゴルフ中にふとした疑問を抱きました。
“今のパットは完璧だったはずなのに、なぜ変な転がりをしたのだろう? このゴルフボールがおかしいのではないか”と。彼は友人の歯科医にそのボールのレントゲン写真を撮るように頼みます。すると、そのゴルフボールの芯はセンターになかったばかりか、円形でもなかったのです。
ならば、自分の手でもっと精密なゴルフボールを作ろう。そう決めたのが32年のことでした。その3年後に第1号ボールが完成、発売されます。そのボールの名前が“TITLEIST(タイトリスト/「タイトル保持者」の意)”だったのです」(メリー・ルー・ボーン)
創業から87年経った今でも、絶対的な“精度”を追求。
「糸ゴムを中身が液状になったコアに巻きつけていくのが、当時のゴルフボールの製法でしたが、強くゴムを巻けば巻くほどコアはその圧力で潰され歪みました。そこでヤングはコアをあらかじめ冷却し、固形化することで糸ゴムを強く巻きつけてもコアが変形しない製法を考え出したのです。この独自製法の確かさを証明したのもレントゲン写真でした。一目見れば誰もがわかる従来品との精度の違い。これこそがタイトリストの原点であり、2019年の現在、ニュー『プロV1・プロV1x』の開発においても求め続けている最重要課題なのです」(メリー・ルー・ボーン)
ラウンド中に大きく曲がったドライバーショット、あるいは転がりの悪かったパットの原因が、使っているゴルフボールの精度不足にあったとしたら、読者の皆さんはどう思うだろうか。その説明は当時のゴルファーの度肝を抜いたが、実はハイテクでならす現代でもそうした問題は少なからずあるのだ、とメリー・ルー・ボーンは指摘する。だからこそタイトリストは87年もの間、均一で最高のパフォーマンスを持ったゴルフボールを量産するために、独自の技術を開発しモデルチェンジを重ねてきたというのである。
「もう一度いいます。ゴルフボールが精密であること、均一であることは決して当たり前ではないのです。それは昔話ではありません。現在もそうなのです」。メリー・ルー・ボーンは諭すように、高い製造精度こそタイトリストボールの優位性なのだと繰り返した。それがすなわち、お目当てのニュー『プロV1・プロV1x』とは何かの答え。変わることのない核心部である、と。