アニカの記録を更新した堅実なプレー
「これは私にとって世界を意味します。アニカがコースでどのようにプレーしたかだけではなく、彼女がどのようにオフを過ごし、どのようにゲームに戻ったかをずっと見てきた選手だったので。だからこれは大きな栄誉です。私は記録のことを考えていなかったし、昨夜まで実際に記録のことを知りませんでしたから」(レクシー)
そんなタフな大会でレクシーが22個ものバーディを奪い、ボギーたった2つのみに抑えられた理由とは何なのか。スタッツを見てみると、興味深いデータが残されていた。
事実、高い木々にセパレートされるキングスミル選手権では、平均266.5ヤード。「このコースが大好き」と語るレクシーはスプーンを多用し、56回のティショットのうち41回のFWキープを記録。多少の距離を犠牲にしてもFWキープを心がけたと見える。それでも「距離が長い」と野村が嘆くコースでも他の選手より圧倒的なアドバンテージがあることに変わりはないのだが。
ティショットの安定がセカンドショットのクオリティを上げており、72ホール中圧巻の64回のパーオンを記録。平均パット数は29.75のため、飛び抜けて良い数字とも言えないため、ショットクオリティで難コースをねじ伏せた形だと言えるだろう。
スイングも強烈な入射角もタイガーと同じ
まずは、そのプレースタイル。得意なロングショットが活かせる場面では、アグレッシブにアドバンテージを取りに行く。スイング面でも両足カカトが浮くほどのジャンプアップがレクシーの飛距離の源であり、若きタイガーも彼女ほどではないが、ジュニア時代から左ヒザを伸ばし、ジャンプアップをうまく採り入れて飛距離を出す点は共通だった。
現在パーオン率1位に立っていることからも分かるとおり、レクシーのアイアン巧者ぶりは際立っている。しかし、止めなければならないシビアなケースでも男子プロのようにピタリと止められる半面、ウェッジではバックスピンが多すぎて戻りすぎるシーンも時折目にする。
このあたりは、この試合を制すために5番アイアンを抜いて120ヤード前後を正確に打つために47度のウェッジを追加するなど、見事に対応。ウェッジ5本体勢でコース攻略に柔軟に対応するなど、ギア面での対策も抜け目がない。
タイガーの全盛期も、二十歳前後にツアーでアドバンテージを持っていたドライバーは年々目立たなくなり、その代わりに成熟して、本当に上手かったのはアイアンショットだった。基本、入射角が強く、大きなターフを取ることが特長だったが、ツアーの誰よりもボールコントロールに秀でていた。その点はレクシーも近い部分があるといえるだろう。
通常の飛ばし屋なら、繊細なアプローチを見せるケースも少ない中、止まりやすいハイスピンを武器にアグレッシブに寄せてくるところも2人の共通点だ。飛ばし屋であっても、多彩なショートゲームの技を持たなければ、ツアー勝利を増やすことなど出来ないのは、男女関係なくツアーの常識だと言えるだろう。