ボールの性能を高める最後のピースは「コーティング」だった
ボールの性能に影響するものとは何か。多くのゴルファーは表面のカバーや中央部の「コア」、そしてそれを構成する素材などを想像するだろう。実際、それは間違いない。ゴルフのボールはインパクトの瞬間につぶれ、それを復元することで性能が発揮される。ボール初速や打感はボールの素材と構造で決まると行っても過言ではない。
近年、ゴルフのボールは大きな進化を遂げ、ツアーを戦う選手たちの飛距離も年々伸びている。しかし一方で、進化に限界が見えているのもたしかだ。
最新ボールは基本的に2年周期でリリースされるが、ベースとなる性能をキープしたまま細部をチューンナップすることが増えている。それはルール上の規制があり、使用するツアープロから「大きく変えないで欲しい」といった要望が出る中で、性能を高めるためにボールの構造を大きく変えるのは困難というのが実情だろう。
そんな中で2月3日、テーラーメイドは新たな5層構造のツアーボール『TP5』シリーズを発表。そこで提示されたのは、ボールの飛びと精度を飛躍的に向上させる新たな進化の可能性だった。それはボールの表面に施す「コーティング」だ。
独自の弾道追跡システムで判明したボールの飛びが乱れる原因
従来のボール開発では、コンピューターで飛行シミュレーションを行い、その中から最適なものをプロトタイプボールとして作成。その後、ロボットテストなど、実打によるテストを実施する。この行程を繰り返す中で見出されたベストな性能を持ったボールが世に送り出されるわけだ。
テーラーメイドは新『TP5』シリーズを開発するにあたり、最新鋭のテストレンジやシステムを用意。飛行中のボールの挙動をミクロレベルで解析する中で発見したのは、同じ素材・構造のボールでテストしたにも関わらず、弾道の一貫したデータが得られないという事実だった。ロボットが正確にボールを打ち出したとしても、あるものは右に曲がり、あるものは吹け上がるような弾道で飛距離をロスする……。コンピューターでシミュレートした通りの結果が出ないのだ。
ボールの不可解な飛びに関するフィードバックは、ヒューマンテストの現場からも寄せられた。なぜこのような現象が起きるのか。テーラーメイドは解析を進め、ついにその“目には見えない原因”を見つけ出した。それが前述した「コーティング」だった。
「コーティング」はカバーの素材硬化や変色などを防ぐために、仕上げとして表面に塗布される。ところが、従来の方式で塗布された「コーティング」はディンプルの底に“液だまり”ができてしまい、それがディンプルの空力デザインを阻害。同じ素材、構造のボールでも弾道が乱れる原因となっていた。
そこでテーラーメイドは薬剤をボール全体に均一に塗布する革新的な技術「マイクロコーティング」を開発。ディンプルの性能を阻害する要因がなくなったことで、テーラーメイドが培ってきた5層構造ツアーボールが本来持つパフォーマンスを余すことなく発揮できるようになったのだ。従来モデルとの比較テストでは、余分な吹け上がりを抑えることでキャリーが伸び、ショットの前後左右の安定性が増し、着弾地点のバラツキを狭めることに成功したという。
「コーティング」の改善という今までにない着想を得たことで、テーラーメイドの新『TP5』シリーズはツアーボールとしてさらなる高みに到達したのだ。
新『TP5』シリーズは10万を超える“デジタルプロトタイプ”から厳選
では、改めて新しい『TP5』シリーズの詳細について解説していこう。
新『TP5』シリーズは、従来通り『TP5』ボールと『TP5x』ボールの2機種がラインナップされ、いずれも「5層構造」のキャストウレタンカバーボールとなっている。コンピューターシミュレーションを活用して10万通り以上の「デジタルプロトタイプ」を作成し、その中から厳選されたベストな構造が採用されている。
ボールを「5層構造」にするメリットは、ドライバーからパターまで、あらゆる番手で最適な性能を最大限に発揮できることだ。ゴルフでは、使用するクラブによってヘッドがボールに衝突するスピードやパワーが異なる。最深部までつぶすことのできるドライバーであれば「コア」の性能が飛びに直結するし、表面に近い部分までしかつぶせないウェッジではカバーや4層目の「インナーカバー」の影響が大きくなる。5層に分けることで、多くのクラブに対応する高性能なボールを作ることが可能になるのだ。
新『TP5』シリーズは、1層目に「スピードラップコア」を採用し、ドライバーなどのロングショットにおいて高初速・低スピンの圧倒的な飛びを実現。“第2のコア”の役割を持つ2層目はフェアウェイウッドやレスキュー、ロングアイアンで効果を発揮し、高初速・適正スピンの飛びを得ることが可能となる。
3層目はミドルアイアンの適正な飛び、4層目の「インナーカバー」はショートアイアンやウェッジのスピンコントロールに大きく寄与する。5層目の「キャストウレタンカバー」はスピン性能の向上に加えて、ショートゲームにおけるソフトなフィーリングにもつながっている。
そして、ボールの表面には、より深いディンプル形状で空気抵抗を抑制し、効率良く飛ばせる新「ツアーフライトディンプル」とその性能を最大限に引き出す「マイクロコーティング」が施されている。ゴルフのプレーにおけるあらゆるショットの質を飛躍的に向上させる唯一無二の5層構造ツアーボールが新『TP5』シリーズなのだ。
ソフトな打感なら『TP5』、初速重視なら『TP5x』を選ぼう
ここからは新『TP5』シリーズの各モデルについて解説していく。まずは『TP5』ボールだ。
『TP5』ボールは、テーラーメイド史上最高レベルにソフトな打感を実現。ショートゲームにおけるスピン性能や心地良いフィーリングを求めるゴルファーに最適なモデルとなっている。もちろんフルショット時には最大サイズのコアがインパクト時のエネルギーを逃さず、「マイクロコーティング」との相乗効果で最適スピンのボールが打ちやすく、従来モデルよりも飛距離性能が向上している。
一方、飛距離を重視するゴルファーに最適なモデルが『TP5x』だ。
『TP5x』ボールは、テーラーメイド史上最もボールスピードの出るモデルとなっている。ドライバーやアイアンのフルショットにおける無駄なスピンを抑えられることが特徴で、再設計された「スピードラップコア」を搭載し、「マイクロコーティング」との相乗効果により強弾道ボールで飛距離を伸ばすことができる。さらに、「5層構造」によってアプローチにおけるスピン性能も備わっており、トータルで隙のない性能を持ったボール仕上がっている。
ソフトなフィーリングを重視するなら『TP5』ボール、強弾道の飛びを求めるなら『TP5x』ボールを選ぶと良いだろう。
さらに今回は、テーラーメイドが推進してきたデザインの工夫、「ビジュアルテクノロジー」にも磨きがかかっている。その代表が『TP5』シリーズ用に改良された「ツアーストライプ」だ。
元々「ツアーストライプ」は、テーラーメイドの『ツアーレスポンス』ボールに採用されたデザインだった。ボールを1周ぐるりと囲むようにデザインされたカラフルな帯が、パッティング時のアライメントをサポート。打ち出した後も2本のラインが浮き上がるように見えることで、ボールのコロがりを視覚的にチェックすることができるビジュアルテクノロジーボールだ。
『TP5』シリーズ専用の「ツアーストライプ」は、従来よりも2本のラインの幅を狭く設計。パッティングにおけるアライメント効果を維持しつつ、他のショットでの違和感が少ない洗練されたデザインに進化した。
さらに新テクノロジーとして「クワイエットアイ」も採用された。ストライプの中央に1つのドットを配置したもので、これを見ながらストロークすることで集中力が高まる。「クワイエットアイ」はスポーツ心理学などの分野で注目されている視線のテクニックで、動作開始直前に“目を一点にじっと止める”ことで、精度やパフォーマンスを高める効果があるとされる。
アライメント効果に集中力アップと、パッティングの向上に役立つ機能的なデザインが「ツアーストライプ」なのだ。
新『TP5』シリーズでは、「ツアーストライプ」のデザインに加えて、オレンジと黒の配色が特徴の「pix」もラインナップ。ボールとして最高レベルの性能を持っているだけでなく、自分に合った機能的デザインが選べることも新『TP5』シリーズの特徴と言えそうだ。
次回の記事では、飛びと精度が飛躍的に進化した新『TP5』ボールをコースで試打。「4plus Fitting Labo & Golf Salon」を主宰するカリスマフィッターの吉川仁を加えた3人のゴルファーが最新モデルの性能をドライバー、アイアン、ウェッジの各ショットで徹底分析していく。