TMトップはみな右利き目。「セオリーは危険!」
―― 最近のPGAツアーの潮流について深掘りしたいなと。そもそも、【PGAツアーの65%がマレット型】なこと自体かなり衝撃ですが、ことテーラーメイドのトップ選手たちにパッティングの共通点は何かありますか?
ビル・プライス そうですね。例えば、利き目の違いはアライメントなど色んな影響があると思っています。今は弊社契約ではないですが、契約していた当時、ジェイソン・デイだけが左利き目でした。それに対して、他のトップ7選手(DJ・マキロイ・タイガー・コリン・マシュー・ガルシア他)は全員利き目が右です。
―― うわぁ〜〜、確かに……。(ボクは左利き目で良かった)でも、TM(テーラーメイド)のトップ選手みなが右利き目とは超意外ですね。もしかすると、そこがTM選手にマレットが多い理由かもしれないなぁ……。
ビル・プライス 言い切れませんが、右利き目だと、左の人より横(右側)からボールを見る形になるのは間違いないです。
日米トップ選手に共通は【正しい姿勢】
ビル・プライス 先ほど日本のコーチ陣とも話していたのですが、日米の共通点があるとするなら【パターの名手はみな正しい姿勢を取る】ですね。これが狂うと軌道もズレるので、名手に世界共通だと思います。姿勢が悪いと、どんな軌道からでも打ててしまって再現性に問題が生じます。
―― なるほど。ボールとの距離とか、その辺りも狂う?
ビル・プライス そうですね。あと、パターの名手はみな【ヒジ・手首・パターまで一直線の延長線上で構えます】。これは、DJ・マキロイ・デイとみな身長も手の長さも違う中で共通。唯一当てはまらないのは、極端に長いパターを使う場合だけです。
―― その腕とパター一直線はセオリー通りですね! 変にハンドダウンで構える選手は、現代はほぼ居ないです。他に何か意外な事実はありますか?
選手の【7割がトゥ側に外す】から、球位置は真上!
逆に、体に近すぎるとヒール打点で左に打ち出す傾向で、こちらの方が選手の割合としては少ないです。(セオリーでは目の少し外側がベストと言われるボール位置だが)目とボールの距離が離れすぎないのが理想だと思います。目の位置は、ボールの真上がいい。
―― なるほど。確かに、削り出しパターの巨匠たちが【目の真上より少し外側のボール位置がいい】と提唱してきましたよね……。(昔からのフェース開閉が基本のパター設計だから、それが自然かもしれないなぁ〜)
ビル・プライス ですから、クランクネックを代表に、パターも【オフセットが付く方がつかまりは良くなります】。プッシュ傾向の人はこういうものを選んだ方がいい。また、視覚的なサイトラインも様々ですし、パターは個々人のクセに合わせた、細かなフィッティングが大事になりますね。
―― なるほど。先程の「利き目」もそうですが、人によって、パターのどの部分を見るか?も違いますもんね?
名手でも、左エイムと右エイムで異なる
2人とも名手ですが、狙い方と打ち出し方向が違うのは、自身のミスの傾向を把握しているから。構えた時の狙い方は目標の左右で異なっても、打った後、2人とも目標上に転がるのは同じです。選手全体のパーセンテージとしては、右利き目が多いこととも関連して右エイムが多いですね。
―― 面白い!右利き目のトップ選手は、目標の右を狙いがちなのか…。ボクは左利き目なのに、狙いが右。どおりで入らないワケだ……(泣)
ビル・プライス 結局、フェースが向く方向に飛ぶため、インパクトで狙い通り戻るか?の再現性が大事。どう向けて構えるか、どう軌道を作るかに関係なく、自分のクセ、ミスの傾向を知っておくことです。例えば、マキロイにミス傾向を聞くと、喰い気味に「左だよ!」と言います。これが分かっているからギアで対策できるんですね。
PGAツアーは1Wもパターも「シャット」に!
ビル・プライス あります。1Wでシャット傾向なスイングが増えたように、パターでもシャット傾向にストロークが変わってきました。イン・トゥ・インのアーク型ストロークが昔からありますが、フェース開閉するため、ボール位置次第で打ち出し方向が変わりますよね。
代表格のタイガーは天才的な感性でそこをスクエアにコントロールします。が、2mのパットはわずか0.7度フェース角がズレただけでもカップは外れるもの。フェース角の方向にボールが飛び出す事実が分かっているため、各選手のストロークも変わってきたんです。
―― フェース開閉ではなく、シャットで【無開閉】が増えた?
この新スタイルの【無開閉アークをしたい】選手たちが増えたからこそ、マレット型ユーザーが65%とブレード型よりも遥かに多くなったんですね。ブレード型はどうしても昔からフェース開閉をしたい人向けですから。
ブレード育ちでもマレットへ。マキロイがいい例
ビル・プライス 欧州や日本など、グリーンの芝質や傾斜、ツアー開催場所が変わるとパーセンテージ的にブレード型が多少増えたりしますが、基本、同じ傾向だと思います。マレットに人気がシフトしていくと思います。一番いい例は、ローリー・マキロイですよね。
彼はずっとブレード型で育ってきて最初のメジャーも勝ったけど、普段練習ではブレード型を使ってタッチを出していても、試合は『スパイダーX』で、オートマチックに機械的に打てるマレットを使う。元々ブレード使いがマレットの利点を取り入れるいい例です。
――そういうことかァ〜〜。結局、我々アマはカッコ良さ重視でブレード型を選んで、実際は入ってないですもん……。(泣)トップ選手は、合理的ですね!でも、元々ブレード型とマレット型じゃ「トゥハング」が全然違うのに、大丈夫なのかな……。
でも、ショートスラントネックを高MOIヘッドに挿せば、トゥハングが通常ブレードよりもやや穏やか。このように、高MOIマレットでもネック次第でトゥハングをコントロールでき、ブレード育ちのトップ選手でも好みのマレットを自在に選べますから。
――なるほど。今日はありがとうございました!
Text/Mikiro Nagaoka