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マッキンタイアの優勝は「ゴルフの国」の素敵なストーリー【舩越園子コラム】

今季2勝目(通算2勝目)を地元で飾った。

所属 ライター
舩越 園子 / Sonoko Funakoshi

配信日時:2024年7月15日 12時00分

PGAツアーとDPワールド(欧州)ツアーの共催大会「ジェネシス・スコットランド・オープン」は、地元出身の27歳、ロバート・マッキンタイアによる劇的な逆転勝利で幕を閉じた。

『スコットランドはゴルフの国』【写真】

マッキンタイアは昨年大会でも優勝に王手をかけていたが、最後の最後にローリー・マキロイ(北アイルランド)に勝利を奪われ、茫然(ぼうぜん)となった姿が記憶に新しい。

今年も最終日を迎えた時点では、マッキンタイアは首位ではなく、ルドビグ・オーバーグ(スウェーデン)から2打差の2位だった。そして最終日。蓋を開けてみれば、ショットが乱れ気味となったオーバーグは徐々に優勝戦線からフェードアウトしていく。入れ替わるように勝利ににじり寄っていったのは、43歳のベテラン選手、オーストラリア出身のアダム・スコットだった。

スコアを3つ伸ばしたスコットがトータル17アンダーの単独首位で先にホールアウト。すると、一進一退を続けていたマッキンタイアは、14番で長いバーディーパットを沈め、16番パー5ではラフからの第2打をピン1.5メートルに付けてイーグル奪った。

ついにスコットに並んで迎えた72ホール目。右サイドのファーストカットからピン6メートルを捉えたマッキンタイアは、慎重に読んだバーディーパットをカップに沈めた。両手の拳を何度も握り締め、タイガー・ウッズそっくりの力強いフィストパンプで、母国で挙げた勝利の喜びをかみ締めた。

スコットランド・オープンは文字通り、スコットランドのチャンピオンを選び出すナショナルオープンだが、これまでにスコットランド出身で同大会を制したのは、唯一、1999年大会のコリン・モンゴメリーだけだった。

昨年のDPワールドツアーのポイントランキングでトップ10(有資格者を除く)に食い込み、今季からPGAツアー参戦を開始したマッキンタイアは、6月上旬「RBCカナディアンオープン」で、ルーキーにして初優勝を飾ったばかり。彼が幼いころから「いつか必ず勝ちたい」と願い続けてきたのは、母国のナショナルオープンである今大会だった。

「練習をするなら、いつも好天に恵まれるフロリダがいい。でも、僕が居たい場所はスコットランドだ。そして、僕が勝ちたい大会はこのスコティッシュオープンだった」

願いは、願い続ければ、いつか必ず叶う。いや、願いを叶えるために努力を続ければ、きっと願いは叶うということを、マッキンタイアが身をもって示してくれたように思う。

残念ながら今回は4位タイに甘んじたオーバーグは、昨年のライダーカップでマッキンタイアとともに欧州チーム入りを果たし、ともに戦った仲である。「マッキンタイアはハートでプレーするタイプのゴルファーだ。全身全霊を込めて心でクラブを振る彼は、ライダーカップのように僅差で競り合う状況になればなるほど強さを発揮する」。

その通り、最終日のマッキンタイアは、「マスターズ」優勝を含む通算14勝の熟練選手スコットに追いつき、追い越し、見事に勝利。スコットランド出身選手によるスコットランド・オープン制覇は、とても素敵なストーリーだった。

スコアリングテントの中でTVモニターを見つめていたスコットは、マッキンタイアが18番でバーディーパットを沈めた姿を目にすると、優しい微笑みを浮かべ、静かに頷きながら立ち上がった。その様子は「今日は僕ではなく彼の日だ。おめでとう、ロバート」と言っているようで、そんなスコットのグッドルーザーぶりは、マッキンタイアの優勝物語に花を添えていた。

コース上の巨大なコーポレートテントに記された『スコットランドはゴルフの国です』というフレーズは、なんとなくマッキンタイアの涙の優勝をあらかじめ予言していたかのように感じられ、「ゴルフの国」の魅力と魔力が伝わってきた。

文/舩越園子(ゴルフジャーナリスト)

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