さて、2024年に一番驚かされたニュースは、世界ランキング1位のスコッティ・シェフラーが逮捕・連行された出来事だった。
「全米プロ」の2日目の朝、シェフラーは交通整理の警官の指示に従わず、無理矢理、前進して警官を負傷させたとみなされ、その場で手錠をかけられ、拘置所へ連行された。
しかし、数時間後に釈放され、警官の護衛付きで試合会場に大急ぎで戻り、遅延していたスタート時間になんとか間に合って、動揺もほとんど見せることなく、好プレーを披露。そんなシェフラーのメンタルの強さは、さすが世界ナンバー1の王者だと思わされた。
この出来事の“その後”もなかなか興味深い。米国内のあるゴルフ場では、警官の人形を運転席の外側にぶら下げたまま、駐車場へと進んでいく1台の車の様子を収めた動画が、SNSで大きな話題になった。さらに、今年のハロウィンでは、シェフラーとポリスに見立てたコスチュームが大流行したというから、大いに驚かされた。
警官の人形やハロウィンのコスチュームが世間ですぐさま登場するあたりは、日本とは異なる米国の国民性なのかもしれない。だが、すでに起こってしまったことにくよくよするのではなく、スパッと割り切って笑いに変える姿勢は、山あり谷ありの人生を強い心で乗り切るためには、ときには必要なことではないかと私は思う。
実際、シェフラーは前代未聞の逮捕劇を精神面でプラスに作用させた様子で、8月の「パリ五輪」では金メダルを獲得。PGAツアーでは今季7勝を挙げ、年間王者にも、プレーヤー・オブ・ザ・イヤーにも輝いた。
そうやって最強の王者の2024年は最高の形で締めくくられるはずだったが、シェフラーは12月25日、クリスマス・ディナーの支度中にガラス片が右手のひらに刺さるケガを負い、手術が必要となって、2025年は開幕戦から数週間の欠場を余儀なくされてしまっている。
しかし、シェフラーなら、その出来事さえも「ケガの功名」となしてくれるのではないだろうか。ゴルフ界の王者だからこそ、たとえ困難に遭遇しても、絶対に乗り越え、次へ次へと進む姿を見せてくれるはずである。シェフラーのような強い王者がいてくれることは、混沌としている現在のゴルフ界の何よりの幸運である。私自身も、彼のように強い心を抱き、前を向いていきたいと願いつつ、新年を迎えたい。
文/舩越園子(ゴルフジャーナリスト)
