2024年シーズンにおいて、私が一番苦笑させられたのは、「マスターズ」でジェイソン・デイ(オーストラリア)がオーガスタ・ナショナルのドレスコードに引っかかり、着ていたベストを「脱いでくれませんか?」と言われてしまった、あの出来事だった。
マスターズ2日目の朝、デイはウェア契約を結んでいるマルボンのベストを着てプレーしていた。しかし「Malbon Championship Golf」という英語の文字が、ほぼ全面に大きく入れられていたそのベストは、ゴルフファンの目を引いたものの、伝統と格式を重んじるオーガスタ・ナショナルには、あまりにも不自然に感じられた。
SNSでも「デイのベストはひどすぎる」「オーガスタ・ナショナルに叱られるぞ」といった投稿が相次ぎ、そうした予想通り、デイは「オーガスタ・ナショナルのオフィシャルから、『そのベストを脱ぐことはできますか』と聞かれたので、僕は素直にイエスと答えて脱いだ」。
メジャー・チャンピオンが試合会場でドレスコードに抵触して着替えさせられることは、きわめて異例だったが、私が興味深いと思ったのは、その出来事の“その後”だった。
問題のベストはマルボンのオンライン販売で248ドルで売れ続け、デイが実際に着ていたベストはオークションに出品され、約250万円で落札された。
そうした売り上げの全額が、デイ夫妻が設立した「ブライター・デイズ財団」を通じて、貧困や傷病で苦しんでいる人々のために役立てられたという後日談は、2024年の何よりの温かいニュースだった。
