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「ケプカ様」を変えた「ヒューマンな心」【舩越園子コラム】

LIVゴルフからPGAツアーに復帰したブルックス・ケプカ。その背景にあった「ヒューマンな心」とは?

所属 ライター
舩越 園子 / Sonoko Funakoshi

配信日時:2026年3月2日 12時00分

PGAツアー復帰を果たしたブルックス・ケプカ。本人、そしてツアーからも「ヒューマンな心」が感じられる復帰劇だった。
PGAツアー復帰を果たしたブルックス・ケプカ。本人、そしてツアーからも「ヒューマンな心」が感じられる復帰劇だった。 (撮影:GettyImages)

1月、2月、そして3月にかけて、PGAツアーで最も注目を集めた選手は、LIVゴルフから脱退してPGAツアーに返り咲いた35歳の米国人選手、ブルックス・ケプカだった。

【写真】復帰直後のケプカに歩み寄る松山英樹

ケプカは昨年12月にLIVゴルフからの脱退を正式に発表。代理人から出された声明には、脱退の理由は「家庭の事情」と記されており、周囲からは、それは体のいい言い訳だと思われていた。しかし、「家庭の事情」はエクスキューズでもウソでもなく、本当だったことが、ケプカ復帰後に徐々に明かされてきた。

2022年6月にLIVゴルフへ移籍したケプカは、その直前の同年4月にジーナと結婚。2023年には、長男クルーくんが生まれた。

「人間は親になると考え方やモノの見方が変わるものだ」

家庭の大切さ、家族の温かさを肌身で感じ始めたケプカと愛妻ジーナは、クルーくんに弟や妹を抱かせてあげたいと思うようになった。そして、2025年にジーナは第2子を妊娠したことを発表。ケプカ夫妻の希望は、あと少しで叶うはずだった。しかし、その年の10月、ジーナは自身のSNSに、こう綴った。

「私たちのベイビーの心臓の鼓動は、16週で止まりました。でも、いつか息子のクルーに弟や妹を授けたい」

深い悲しみを味わったケプカ夫妻は、家族が寄り添うことの大切さを今まで以上に痛感し、ケプカは世界各国を転戦する生活をやめて、「できる限り、家族の傍にいて、一緒に過ごしたい」と考えるようになった。

「それが、LIVゴルフから離れ、PGAツアーに復帰したいと考えた何よりの理由だ」

かつて「メジャーに強い男」と恐れられたケプカは、言いたいことをストレートに口にしたり、ときには横柄な態度も取る「ケプカ様」と、嫌味交じりに呼ばれていた。そんな「ケプカ様」が、家族を最優先し、ゴルフは二の次だと言い切るようになったこと、そして、お金よりヒューマンな心が彼をPGAツアー復帰へと導いたことは、とても素敵なストーリーに感じられる。

ケプカの復帰を早々に承認したPGAツアーには、ケプカが復帰すれば、「ツアーに華やかさや賑わいが戻り、注目度が向上するだろう」、「LIVゴルフからの復帰希望者が増えるだろう」といった計算もあったに違いない。

しかし、そうした現実的な思惑とは別に、家族を想うケプカの「ヒューマンな心」も汲み取って、彼を早々に復帰させる特別待遇の復帰プログラムを作成したのだとすれば、マネー重視の傾向が強まっているPGAツアーにも、「ヒューマンな心」がちゃんと残っていたのだと感じられて、うれしくなる。

PGAツアーがケプカに科した罰金は500万ドル(約7億80000万円)だったが、PGAツアーは、あらかじめ、その罰金を然るべき団体へ寄付する前提でケプカに科した。

そして、PGAツアーとケプカが協議した上で決定した500万ドルの寄付先と内訳は、ニクラス・チルドレンズ・ヘルケア財団に100万ドル(約1億5600万円)、ケプカの地元であるフロリダ州のセント・ジュード・チルドレンズ・リサーチ病院や地元警察の財団へ150万ドル(約2億3400万円)といった内容で、ここでも「子ども」「家庭」「地元」といった言葉がキーワードになっていたことが伺える。

ケプカは「僕は変わった。以前とは別の人間だ」と言った。だが、別人に変身したわけではなく、人生において最も大事に思うものが変わったということなのだろう。ケプカの愛情は、家族に注がれるだけではなく、これからも家族が暮らしていくフロリダ州の地元にも向けられている。

今年1月にPGAツアーへの復帰が正式に決まった際、ケプカがいの一番に出場の意思を示したのは、地元開催のコグニザント・クラシックだった。

「おかえり、ブルックス!」と記されたTシャツを着た大勢の地元ファンに迎えられたケプカは、初日こそ大きく出遅れたが、徐々にパットの調子を上げ、最終日は6アンダー、「65」をマークして9位タイとトップ10に食い込んで、大勢のギャラリーを歓喜させた。

「この3日間は安定したプレーができた。パターが明らかに向上した。ようやく少し自信が得られた」

今年のコグニザント・クラシックは、シグネチャー・イベントの合間に挟まれ、世界ランキングのトップ25以内の選手が一人も出場しない「弱小フィールド」となって、2027年以降の大会存続が危ぶまれている。しかし、そんな世知辛い現実の陰で、PGAツアーとケプカの「ヒューマンな心」が垣間見られたことは、砂漠の中に咲いた花々を目にしたような気持ちになった。(文・舩越園子/ゴルフジャーナリスト)

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