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「締め付けられる難しさ、これだよな」 藤田寛之が8年ぶりのUSGA大会で思うこと

藤田寛之が世界最高峰の舞台で目を輝かせている。

所属 ALBA Net編集部
高桑 均 / Hitoshi Takakuwa

配信日時:2023年6月29日 13時34分

<全米シニアオープン 事前情報◇28日◇セントリーワールド(米ウィスコンシン州)◇7218ヤード・パー71>

藤田寛之が2015年の「全米オープン」以来となる、全米ゴルフ協会(USGA)の試合に戻ってきた。深いラフ、硬いグリーン、選手の技量が極限まで試されるコースセッティングでの戦いが、藤田は大好きだった。今月16日に54歳になったいま、久しぶりにその場に足を踏み入れ、「雰囲気も環境も最高だし、締め付けられるような難しさ。『これだよな』という感じですね」と、痛めつけられる記憶と懐かしさが、喜びとともによみがえってくる。

月曜日に当地入りし、火曜日、水曜日にそれぞれ18ホール、合計36ホールの練習ラウンドを敢行。「いろいろ痛くなってくるんです」と、少しばかり体の衰えを感じるようになってきた。それでも、戦う姿は変わらない。深いラフからのアプローチを繰り返し、首をかしげては打ち方を変えてみる。うまくいかないことが、とにかく楽しい。

ラウンド終了後にはアプローチ練習場で発見もあった。ほかの選手のラフの打ち方を見て気づいたのが、ボールの位置だ。同じように左寄りにしてみると、これが不思議。ニラのような深く粘っこいラフでもウェッジが滑るように芝の中に入り、払うように打つことによって苦労していた寄せが「安定するかも?」と目からうろこだった。今後の日本ツアーで活用するかと言われれば「?」だが、そんな発見があるから、54歳になったいまも勉強はやめられない。

藤田といえば、試合会場でも日が暮れるまで練習に明け暮れ、真っ暗のなか練習グリーンで球を転がすのが当たり前だったが、今では泣く泣くセーブする。広い練習場、アンジュレーションがあるアプローチ用グリーンなど、目の前には藤田曰く『遊具』が多数。「長くいるとやりすぎてしまう」と練習欲を必死に抑え、まるで少年が公園で“遊び足りない”とでも言いたげな目でコースをあとにした。

先月の「全米プロシニアゴルフ選手権」にも国内シニアツアー上位の資格で出場し、予選を通過した。3日目には「マスターズ」覇者で御年65歳のベルンハルト・ランガー(ドイツ)、松山英樹と並んで米ツアーアジア勢最多勝利者のチェ・キョンジュ(韓国)とラウンド。水曜日の練習グリーンでは、そのランガーから話しかけられるなど、ここでも少年のような目でメジャーの空気を感じ、刺激を受ける。

「雰囲気とか、ここにいることを楽しみたいです。レギュラーのときは日本代表として結果を出して行かなきゃと思ってしまったりしていたけど、いまはやっぱり、こういうフィールドにいられることが楽しいです」。世界トップのフィールドにいられることは、年齢を重ねてもうれしいもの。「またここに来たいなと思うし、自分を誇らしく思います」と、この場で感じる幸せをかみしめる。

全米プロシニア出場後も多くの応援や寄せられたコメントに背中を押されている。「いろんなサポートを受けたり、応援もしてもらっているので、そういう方々に喜んでもらいたいですし、4日間プレーすること。世界で最後まで戦っているというのを感じてもらいたい」。最高峰の舞台に出続けるために、『中年の星』はまだまだ歩み続けていく。(文・高桑均)

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