<JLPGA新人戦 加賀電子カップ 初日◇10日◇グレートアイランド倶楽部(千葉県)◇6525ヤード・パー72>
「270ヤード飛ばすドライバーが武器です」。11月に行われたプロテスト合格者向けのアンケートに、木村円(まどか)はそう記した。ベストシーズンより気温はグッと下がったが、その片鱗を見せたのは310ヤードの14番パー4。「わりと当たりました」というティショットは、ピンまで残り30~40ヤード地点まで運んで“寄せワン”のバーディを決めた。
身長173センチで手足の長さを生かしたスイングは、夏場ならヘッドスピードは47~48m/sを記録する。この時期はさすがに速度が少し落ちるものの、「ストレートから軽いドロー」を理想とする弾道は、きれいな放物線を描く。その快音ぶりはときに「男性と間違われることもある」という大型ルーキーだ。
1999年1月生まれで、渋野日向子や原英莉花、河本結らと同学年。ツアー優勝者は15人で55勝を数え、いわゆる黄金世代と呼ばれている。木村は今年6度目のプロテスト挑戦で、初めて最終まで駒を進めて合格を手にした。合格直後は「(黄金世代では)遅れてきた分、いま活躍している同級生よりも何倍も努力をしてレギュラーツアーで勝ちたい」と語っていた。
高校生時代は全国大会とは縁がなかった。「経験を積むために大学に入った」という日体大で転機が訪れた。ゴルフ部の同期に河本結がいた。高校時代は練習が楽しいと思えていなかった木村だが、研究熱心な河本をはじめ同期6人で切磋琢磨。「一緒に練習していて楽しかったんです」と腕を上げ、「朝日杯争奪日本学生ゴルフ選手権」や「日刊アマ」のタイトルを手にし、プロのトーナメントの舞台も経験した。
大学卒業後の21年からアマチュア資格を放棄して、プロテスト合格を目指した。その間、後援会が発足されるなど多くの応援者に支えられた。6度目の合格に自分以上に周囲が喜び、激励の言葉をもらってようやく合格の実感が湧いたという。
QTは1次で敗退したが、今大会はプロテスト合格後の初戦であらためて感じるものがあった。「すごく感謝の気持ちがあります。合格していなかったら出られないですし、3日間開催なのもありがたい。来年のステップやレギュラーの試合に向けていい経験になると思うので、この3日間でしっかり課題を見つけたい」と話す。
もちろん感謝だけではない。「新人戦優勝となると注目されるし、自分の名前も広められるチャンスだと思うので、がんばって優勝を狙いたいです」と結果にもこだわるつもりだ。
初日は「納得はいっていないですね。もう少し伸ばせたかな…」と5バーディ・3ボギーの「70」で首位と4打差の6位タイで終えた。「3日間60台で回るのが目標でしたが、あしたから2日間は60台で回りたい」と気を引き締める。
あす2日目の18番パー4ではドライビングディスタンス賞(賞金10万円)がかけられている。「フェアウェイに打てれば」と自信を見せる。新人戦のタイトルの前に、98期生飛ばし屋ナンバー1の称号を手にしたい。(文・小高拓)
