<JLPGA新人戦 加賀電子カップ 最終日◇12日◇グレートアイランド倶楽部(千葉県)◇6525ヤード・パー72>
2打差の2位から出た18歳の藤本愛菜が、3バーディ・1ボギーの「70」で回り、トータル9アンダーで逆転優勝。98期生NO.1の座と優勝賞金270万円を獲得した。
最終日は気温9.6度、風速7.6m/sと寒さに風が加わった。平均スコアを見ると初日は「70.9000」、2日目「71.6500」に対して、この日は「74.9500」。ときおり風速10m/sを超える突風が吹くなど、スコアメークに苦しむ選手が続出した。
藤本は「耐える一日」と振り返る。首位の伊藤愛華が序盤に2つのボギーで落とす中、6番までパーを重ね、7番パー4で15メートルのバーディパットをねじ込む。8番で伊藤がボギーとして単独首位に立つと、9番でバーディ、伊藤がボギーで3打差リードで折り返す。
後半12番で藤本が3パットのボギーを喫し、伊藤が11番から3連続バーディで再び並んだ。「並ばれたのは気づいていました。バーディを獲らなきゃと思う半面、ボギーも打てないと葛藤したんですけど、自分のマネジメントを貫き通しました」。
攻めたい気持ちを抑えて自分のゴルフを貫き、15番でバーディ奪取。伊藤は終盤にスコアを崩し、終わってみれば5打差をつける圧勝だった。
難コンディションの経験は豊富だった。ナショナルチームの一員として活躍してきた藤本は、「昨年海外の試合に行かせてもらって、風とかをたくさん経験したことが生きたと思います」。風が強い時のマネジメントを覚えた。例えば左から風が吹いているときは、実際のピンよりも左側に仮想のピンを作ってそこに向かって構えて振り抜く、という具合だ。
また、開催コースのグレートアイランド倶楽部は、今年苦い経験をしている。プロテスト合格を目指す25歳以下の選手を対象とした「マイナビネクストヒロインツアー」で、同コースが舞台の第3戦に出場。優勝争いを演じていたが、グリーンの左に池が広がる17番パー3でティショットを左に曲げてダブルボギーを喫し、3位に終わっている。
この日は2位の伊藤に2打差で17番を迎えた。「あの試合がよぎりました。あれがあったからいい選択ができたと思います」と、同じ轍は踏まなかった。「マイナビのときはピンしか見ていなくて(笑)。きょうは一切ピンを見ずに、グリーン奥のテレビ塔がピンだと思って打ちました」。グリーンセンターの奥をターゲットにし、見事にパーで切り抜けた。
「強風の中、このスコアで回れたのは自信になりました」と笑顔を見せる。プロテストは3位で通過し、ファイナルQTも21位で前半戦のフル出場権を獲得した。この1年の成長は自分でも実感できる。
高校3年時に初めて受けた昨年のプロテストは、2打足りずに涙をのんだ。「落ちてからすごく悔しくて。オフは必死にトレーニングをして、辻村明志コーチと二人でがんばりました」。12月から4月まではほぼクラブを握らず、タイヤを使ったトレーニングに没頭した。
重量のあるタイヤを引いて走ったり、押したり、ひっくり返したり…。タイヤトレーニングのメニューは20種類以上ある。「1日3時間半やる日もあって。泣きながらやる日もありました。タイヤは見たくないです。でもつらいトレーニングをできたという自信が大きいですし、今につながっていると思います」。肉体強化によるスイングの安定感に加えて、過酷なトレーニングをやり切ったメンタル面の強化にもつながった。
2026年の目標はシード権と掲げ、将来的には「アメリカで活躍したい」と話す。平均飛距離は240ヤードで、ショットの安定感が持ち味。このオフの課題は「パッティング」を挙げる。「常に10センチオーバーで打てるようになりたい。強い選手は絶対にカップをオーバーさせる技術がある。10メートルでも入りそうなパットをもっともっと増やしたい」。
新シーズン開幕まで3カ月。「このオフもまたイチからタイヤトレーニングです(笑)」。見たくもないタイヤと向き合うオフが、再び始まる。(文・小高拓)
