<アムンディ・エビアン選手権 最終日◇12日◇エビアン・リゾートGC(フランス)◇6479ヤード・パー71>
3位で激闘を終えた直後。最初は笑顔で応じていた現地インタビューが終盤に差し掛かった時、あふれ出る涙をこらえることができなくなった。「きょうは苦しかったけれど、自信にもなりました。優勝に向けて諦めずに頑張りたい」。なんとか言葉を振り絞る。
メジャー優勝は、本当にあとわずかのところまで迫っていた。最終組が最終18番を迎えた時、 実質的に勝利の可能性を残していたのは3人のみ。 トータル18アンダーの岩井とユ・ヘラン(韓国)、トータル17アンダーのブルック・ヘンダーソン(カナダ)が、最後まで緊迫した状況を作り上げた。
2オンに成功したヘンダーソンが2メートル、3打目を岩井は2.5メートル、ヘランが4メートルと、全員がチャンスにつけていた。まずはヘランがバーディパットに成功し、単独首位に躍り出るその後に迎えたのが岩井のトライだった。
「今週はラインがすごく読めていて、自信を持って打つことができた。最後、入るか入らないかは…運が回ってこなかったですね」
ここに至るまでに勝負所のパットを何度も決めてきた。しかし、その結末は無常だ。ボールがカップ右へ一筋逸れた瞬間、敗戦が確定した。「悔しい方が大きい」というのが本音。それでも2年前こそ10位になっているが、昨年は予選落ちしている大会で今年は堂々の優勝争いを演じた。「メジャーでこういう経験ができたのは本当にうれしいし、今後に生かせる。勉強になりました」と前を向く。
トップのヘランと3打差の2位からスタートしたものの、序盤はティショットが右へ、右へと出ていく。そして、その影響は3番で最悪な形で表れた。「アンラッキーでした。少しミスしたら、バウンドして向こうに行ってしまって」。ここでも右に出たボールは、ラフ、さらにはカート道も越え、ブッシュのなかへ。「(成功と失敗が)フィフティフィフティだったので、大きなミスをするよりは」と競技委員を呼んでアンプレヤブルを宣言。ダブルボギーを叩いた。
それでも、ヘランが伸ばしあぐねるのを横目に、バーディを積み上げた。6番、9番でまずは3番のスコアロスを帳消しに。14番パー3で1打差まで迫ると、15番パー5で追いついた。「ゴルフは最後まで何があるか分からない。誰のスコアがいい、悪いは気にせず、自分のプレーに集中してました」。結果的に18番でイーグルを奪ったヘンダーソンを、ヘランがプレーオフで制して優勝。だが、岩井は間違いなくライバルたちにプレッシャーを与え続けた。
インタビューの様子を、元世界ランク1位のリディア・コ(ニュージーランド)が見守っていた。わざわざ酷暑のなかで待ち、終了するとすぐに岩井のもとに寄っていく。そして、まだ少し目が赤い後輩を抱きしめながら『いい戦いだった。自分のプレーを誇りに思っていい』など声をかける。5歳差の2人だが、プライベートでラウンドをしたこともある仲。ツアー殿堂入りも果たす選手からの温かい言葉は、何よりも励ましになる。
メジャー15戦目にして自己最高の3位になった。スタートホールでは、海外のギャラリーから『アキエ~』という声援が飛ぶ。ロープ外では予選落ちした妹・千怜も見守った。最終日が行われた7月12日は、タッグを組んだキャディのマーク・ウォリントン氏の54回目の誕生日。「気合は入っていたんですけど。(予選落ちした)去年よりはいい誕生日になったはずだと思います」。海外でも、多くの支えを感じることができる。
3週後には今季最後のメジャー「AIG女子オープン」(全英、7月30日~8月2日)が待っている。「この経験を生かせるのは、自分しかいない。まだAIGもあるし、試合も残っているので頑張ります」。この時には涙はすっかり乾き、笑顔でそう宣言した。(文・間宮輝憲)
