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“神対応”には“神対応”でお返し 渋野日向子が久々の母国で得たもの【記者の目】

“神対応”には“神対応”でお返し 渋野日向子が久々の母国で得たもの【記者の目】

配信日時:2022年11月8日 07時40分

理由はただ一つ。自分を応援してくれるギャラリーのためだ。「初日からたくさんの方が自分についてくださった。成績が悪くてもみなさん最後まで応援してくださいました。足元が悪いなかでも、小さい子がたくさん来てくれた。その人たちにいいプレーを見せたかった」。わざわざ足を運んでくれた人たちへ、“いいプレー”というかたちで感謝を表したかったが、それは叶わない。それでも何かのかたちで感謝を伝えたかった。そう思っての行動だった。

ファンは一般的に選手を応援して支える立場。しかし、応援してくれた子供たちに対して「あの子たちがいなかったら相当打っていたんじゃないかな。本当にいてくれてよかったと思います」と話したように、渋野もまたファンに支えられているのだ。

アメリカにもついてくれるギャラリーはもちろんいるが、人数はどうしても日本よりは少なくなってしまう。日本に住んでいる人たちはなかなか来られない。ましてや学校がある子供たちならばなおさら。そんな状況が長い米国生活では忘れてしまいがちだが、海の向こうの母国にはまた応援してくれるファンがいるのだ。

もともと渋野はギャラリーに後押しされて盛り上がっていくタイプである。顕著だったのは優勝した「全英AIG女子オープン」。初めてやってきた日本人に声援は少なく、「ナイスショットしても、最初はなんも反応なくてつまらんかった」と話していた。しかし、子供のギャラリーとハイタッチなどを繰り返していくと、試合が進むにつれて異国のギャラリーはシンデレラのとりこに。最終日にはギャラリーも、渋野自身もノリノリになっていき、最終ホールでは大歓声と拍手を独り占めした。会場の盛り上がりがなかったら、きっと海外メジャー制覇はならなかっただろう。

渋野自身が誰よりもファンのありがたみを分かっている。だから、プレー中の態度だけでなくホールアウト後にはできる限りサインに応じた。多い日には100人を超えた。子供たちとは記念撮影にも応じた。「私たちは夢や希望を与える存在にならないといけませんから」。自分の背中を見て育ってくれる、目標としてくれる子たちへは特に手厚く対応した。毎日、最大限の感謝を込めてできる限り行った。だからこそ、最終日に優勝争いから離れて裏街道のスタートの遅い組となろうとも、多くのファンが渋野のために足を運んでくれたのだ。自分の支えとなってくれたファンに対して“神対応”というかたちで恩返しをしたのである。

今回の帰国では「樋口久子 三菱電機レディス」、そしてTOTOと2試合に出場した。戦いを終えた総括として1試合はトップ10に入ろうとも「この2試合は収穫なし」と話していたが、遠いアメリカで戦っていようとも応援してくれるファンがいる。それを改めて肌で感じることができたのは、米ツアー最終戦に向けて何よりの力となるのではないだろうか。(文・秋田義和)

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