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10番ではUTで驚異のアプローチ! 畑岡奈紗はなぜ難しいメジャーで『64』が出せたのか?

10番ではUTで驚異のアプローチ! 畑岡奈紗はなぜ難しいメジャーで『64』が出せたのか?

所属 ALBA Net
下村 耕平 / Kohei Shimomura

配信日時:2020年10月13日 12時00分

さらに石井は、技術的なポイントにも言及する。「畑岡プロはリリースポイントのコントロールが秀逸だと思います。風が強かったり、ピンが奥のときなんかは、リリースポイントを遅らせる。極力スピン量や出球の角度を抑えて球足を使っていく。一方で、バンカーのように出球の高さを確保したいときは、リリースポイントを極力手前に持ってくる。彼女はリリースポイントを意識的にコントロールしているのです」。

この技術が活かせるのは、渋野が3日目のスタートの10番でダブルパーの「8」を叩いた場面だという。セカンドショットを池に入れて、池の手前にドロップした4打目は、ピンの近くに着弾したものの、強烈なバックスピンで戻り、下り傾斜も手伝って、26ヤード手前のエッジまでコロがってしまったのだ。畑岡が最終日に利用した傾斜は、3日目の渋野にとっては鬼門となった。

「ティショットが左ラフ、セカンドを池に入れたところまではしょうがない。この後、近くにドロップしてウェッジのフルショットを選択したのです。ピンは左奥で、グリーンの奥は崖になっている。振れば振るほどスピンはかかるので、キャリーは落ちてからマイナスと思っていれば、さらにキャリーを奥にしなければならない。ピンの奥はわずかなスペースしかないので、それはそれでリスクが高いわけです。もう少し距離を離れて、手前から転がしていくようなショットでないと、あのピンに対してはフィットしなかった」

結果論にはなってしまうが、畑岡のようにボールを抑えて手前から転がしていくようなショットが打てれば、ダブルボギーで収まったかもしれないというのだ。「畑岡選手は、そのピンに対してボールが落ちてからどういう挙動をするのか想像している。それに合う番手、打ち方というものを後から合わせていく感じなのです」。もちろん想像力だけではうまくいかない。畑岡のように実現できる技術が伴って、初めて成立するマネジメントだ。

今大会で再びメジャー制覇が遠くないことを感じさせた畑岡だが、実際に勝つためにはあと何が必要なのか。「ショットの質もいいしショートゲームも上手いので、足りないものはないと思います。もうちょっと早い段階でアクセルを踏んでいってもいいのかなという感じはしました」。畑岡の初日は2オーバーで首位と5打差の36位タイ。そこから徐々にスコアを伸ばし、最終的に「64」の爆発で3位に入ったが、トップまでは届かなかった。

「彼女はわかっていると思うんですけど、メンタルにもゲージがあって、使える量は決まっている。最初からアクセルを踏むと疲れてしまうので、いきなりガンガン行かない。なので、将棋の“歩”をスッと動かすようなスタートで、みんな出て行くのです。畑岡プロは72ホールあるなかで、もう少し早くアクセルを踏んで先行馬になるような展開に持ち込めれば、今大会で独走したキム・セヨンのような勝ち方ができる可能性も十分にあります」

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