<トラストグループカップ 佐世保シニアオープン 最終日◇11日◇佐世保カントリー倶楽部(長崎県)◇6688ヤード・パー72>
首位と4打差の6位から出た藤田寛之が8バーディ・1ボギーの「65」で回り、トータル10アンダーまで伸ばしてI・J・ジャン(韓国)、プラヤド・マークセン(タイ)とのプレーオフに突入。1ホール目にジャンが脱落すると、2ホール目でバーディを奪った藤田に軍配。今季初優勝は2023年「日本シニアオープン」以来のシニア4勝目となった。
最終日のスタート前につぶやいた。「自分はショットの状態がよくないので、ビッグスコアは出ない。追いつかないですよ。ジャンさんが10(アンダー)までいったら後続は厳しいでしょうね」。7アンダースタートのジャンが3つ伸ばせばそのまま逃げ切りV、後続は10アンダーに届けばチャンスがあるのではと話した。
5月以降、ショットの不調に陥った。ダウンスイングでクラブが寝て、フェースが開く悪癖に悩まされ続けた。ボールコントロールの精度が低く、バーディチャンスが少ないためスコアを大きく伸ばせない、というのが藤田の状態だった。
唯一の追い風は、今大会はレギュラーツアーのような硬く締まったグリーン。「芝目はありますが素直なグリーンなので、好きなグリーンです」。パット巧者の藤田にとっては、グリーンコンディションを大歓迎していた。
出だしの1番、2番と連続バーディで気配を感じさせると、前半だけで3つ伸ばしたが、ジャンも3つ伸ばして前半を終える。後半も出だしの10番で一つ伸ばすが、差が縮められないまま終盤へ。先にホールアウトしたマークセンがトータル10アンダー。「10にして2位タイで終われたら最高」と上がり3連続バーディで締めくくった。
トータル10アンダーでマークセンと並んで2位タイでホールアウト。首位のジャンが1打リードで17番に入っていた。「短いパー4と(18番は)パー5なので」とプレーオフになるとは予想せず、帰りの片づけを始めようとした。その矢先にジャンが17番でボギー。18番もパーで終わりプレーオフへ。
プレーオフ1ホール目は藤田とマークセンがバーディ。ジャンがパーで脱落。2ホール目は2メートルのバーディパットを外したマークセンに対して、30センチのバーディパットを沈めて勝負を決めた。「びっくりですよ。まさか自分が優勝なんて…」。表彰式中もずっと信じられない表情を浮かべていた。
「今日はパットが入りまくりました。それにラッキーもありました。モッているというか、勝つ時はこういうことがあるんだなと。何やってもうまくいかない日もありますが、なにやってもいい結果にいく日もありますよね」
ラッキーを象徴するのがプレーオフ進出を決める正規の18番。バーディパットは8メートほどが残った。左に曲がる傾斜で「カップ右ふちを狙って打ったら、ちょっと引っかけました。カップ左ふちに向かって出たので、ダメだと思ったら、右に戻ってきて入ったんです」。レギュラーツアー通算18勝を挙げ、シニアでも4勝目。最高のプレーをして勝ち切るときもあれば、「自分が勝っていいの?」という展開で勝つ時があるのを思い出した。
運を待っていただけではない。ショットの“応急処置”が奏功した。「フェースが開くので、インパクトで開かないように構えを変えてみました」。普段の藤田は、クローズスタンスで肩のラインはオープンでフェードを打つ。しかし、今週はオープンスタンスにして肩のラインをクローズに変えてみた。「フックが出てもいいから、フェースが開かないよう」。その作戦がハマり、フェースが開く大きなミスはほぼなく、バーディチャンスを作れたのも勝因の一つだ。
「シニアはゴルフを楽しみたい、と思う一方で、応援してくれる方のためにも、結果を出して喜ばせたいという思いもあります。60歳までは優勝争いできる力を保ちたいと今は思っています」
今年57歳になったがあと数年は、国内シニアの一線で活躍するために、朝から体を動かすなど練習の取り組み方を変えた。それでもショットは良くなる気配がなかった。「今年はもうダメかな…」。そんな弱気の言葉も出るようになっていた矢先での優勝だ。
「今回のショットは応急処置ですよ。根本の解決はまだですね」と話すが、優勝という結果を手繰り寄せたことは、いいきっかけになればとの願いもある。「ショットの課題をクリアして、周りからもう1回『藤田のゴルフいいね』と言われるところまで持っていきたいですね」
2024年の「全米シニアオープン」で優勝争いを演じて、惜しくも2位。そのポイントを足掛かりに25年のシード権を獲得した。昨年は米シニアにフル参戦したがシード獲得とはいかず、今季は国内に専念。賞金ランキング上位に入って、来年再び海外メジャーに出場することを目標とした。
今回の優勝で賞金ランキングは12位から8位にジャンプアップ。海外メジャー出場は最低でも同ランク4位以内が求められる。残り試合は5試合。厳しい状況ではあるが、全力を尽くす。60歳まで第一線で、そして再び世界の舞台に立つために。まだまだ汗を流す。
