メジャー女王としてのプレッシャー、自分に集まる多くの視線…。海外で挙げた1つの勝利で突然“世界が一変”し、心身ともに疲れがピークに達してもおかしくなかったのが、この時期だろう。だが続く「デサントレディース東海クラシック」で、渋野日向子の強さを改めて人々の心に刻む劇的勝利をつかむことになる。
初日を同級生の原英莉花、新垣比菜と回った渋野は、ここで「久しぶりにいい気分です。楽しくプレーすることができました」という気持ちを取り戻した。「一緒に回った2人のおかげですね」。時に笑い話に花を咲かせながらのラウンドは、等身大の自分に戻れる時間になった。この結果、トップと6打差こそついたものの、初日8位タイと好発進を切った。続く2日目は「70」で回り、首位と8打差の20位タイまで順位を落としたのだが、これがその後の“演出材料”となった。
最終日を迎えた大会で、トップに立っていたのは申ジエ(韓国)。伸ばしあいの大会で、この実力者との8打差は絶望的な差と言っても過言ではない。もちろん相手はジエだけではない。誰がどこから伸ばしてもおかしくない大会だった。渋野自身も「(逆転は)ムリだと思っていました。最後まで悔いの残らないように攻めよう、それだけを考えていました」と、ラウンド前の心境を後に語った。しかし、スコアを伸ばした“誰か”は、他でもない渋野日向子だった。
この日の渋野はパットが絶好調で次々とチャンスを沈めていった。そして15番パー5でこの日7つ目のバーディを奪い、渋野から遅れること1時間30分後にラウンドを開始した首位のジエに、ここで並んだ。さらに16番パー3で、逆目の難しいラフから15ヤードのアプローチを直接決めるチップインバーディを決め単独トップに。最終18番では6mのバーディパットがカップに蹴られたが、この時点で1打のリードを持ってクラブハウスに戻ってきた。
まだ最終組は12番をプレーしており、この1打差は十分なリードとは言い難い。しかし、渋野のホールアウトを待ったかのように、突如強く吹き始めた風の影響などもあってか、その後ジエも含め後続の選手はスコアを伸ばしあぐねた。結局、プレーオフに備えパッティンググリーンで練習していたルーキーを追い抜く選手は現れず。全英から帰国後初優勝は、8打差逆転という、あまりにインパクトの大きい勝利となった。
