国内男子ツアーを管理・統括する「日本ゴルフツアー機構」(以下、JGTO)は26日、都内ホテルで記者会見を行い、3月17日付でツアー運営、および事業展開を担う「株式会社ジャパン・プロゴルフツアー」(以下、J-Tour)を設立したと発表。4月より日系投資ファンドの日本産業推進機構(NSSK)と連携し、新体制で国内男子ツアーの活性化に向けての取り組みをスタートする。どのような改革が行われるのだろうか。
■「財政基盤が弱い」団体の改革に向けて1年前に動き出した
記者会見前日のJGTO定時社員総会および臨時理事会終了後、諸星裕会長の2期目の続投が決まった。「2年前に執行部が始まった頃、この団体の財政基盤が非常に弱いと感じた。抜本的なことをやらないといけない。日本男子ゴルフを確実に変えることができる、なくてはならない改革をするつもりです」と2期目の意気込みを話していたが、それがこの新会社の設立であり、同社に出資するNSSKの存在だった。
昨今、国内女子ツアーに押されて人気低迷といわれる国内男子ツアー。約1年前にプロジェクトチームを作って改革に動きだし、議論を重ねてきた。今後JGTOは選手管理や競技管理、次世代の育成に特化し、J-Tourがツアーの企画・運営・改善を行い事業の収益化を担うことになる。
■ゴルフの市場規模を考えると男子ツアーは「宝の山」
2014年に設立されたNSSKは「日本のために投資を行う」ファンドだというが、なぜプロゴルフ業界に参画したのか。代表取締役社長・津坂純氏は次のように話す。
「野球、サッカー、バスケットボールといろんなプロスポーツリーグがございますが、その中でもゴルフ産業というのは1.4兆円にのぼる巨大な市場です。いろんな産業がある中で、日本では一番のスポーツ産業、経済貢献でいえばゴルフなんです。競技人口は800万人以上といわれ、スポンサーからしたら宝の山だと思います」
その一方で、現状の国内男子ツアーは、「その価値がうまく生み出されていない」。その上で「仕組みを変えることで価値を上げる。これは時間がかかります。5年、7年、もしかしたら15年かかるかもしれない。仕組みや構造改革をすれば実現できると信じているし、やり遂げたい」と、価値向上のために長期的な目線で改革を行う。
■150~200億円の資金提供とプロ集団で構造改革へ
改革に向けてNSSKが提供するものは大きく分けて3つ。1つは成長資金の提供。「潤沢な資金を用意している」と5年から10年で150~200億円を投入する。
2つ目は成長するためのノウハウ。「デジタルやAI、デジタルコンテンツの配信の仕方、攻略の仕方など、メディアを組んでどんどんコンテンツを出していかないといけない。知名度がなければ価値がない時代」といい、デジタル、最新のビジネスツールを導入する。「スターを作らないといけない。だけど、それが目的ではない。スターは結果なんです」。ツアーの価値向上=スターが生まれると考えている。様々な角度から選手を多く露出することが一つの施策となる。
3つ目は持続的な成長のための実行部隊。「成功するためのマニュアル作り、スポンサー獲得の営業、KPI、営業資料の作り方。それら実行するために必要な専門家とプロ経営者」とプロの組織を作り仕組み・構造改革を行っていくとした。
「ファンとスポンサーの獲得、ファンが興味を持たなければスポンサーもつく理由がない。ファンとスポンサーの獲得が何より大事。それをするために今まで通りではダメ。エンゲージメントの仕方を変えないといけない。スポンサーやファンの声を聞いて、それに基づいたサービスの影響の仕方を設けることで、大きく変わると思います」
本格稼働は来年4月から始まる2027年シーズンとなる。同時に、みずほフィナンシャルグループのツアータイトルスポンサーの発表もされた。
■2027年はJ-Tour主催の6試合がショーケース
現段階でのアイデア案として、NSSKのシニアパートナーの徳山一晃氏から発表があった。改革の1つは「大会の在り方」だ。既存大会で実施されていることも多いが、ライブやフェス、グルメ、インロープ観戦など「現地でしか楽しめない」一般メニューの強化。またVIP向けメニューも強化する。各大会が地元のファンや企業に「年に1度の恒例イベントとして地域密着型のイベント」として盛り上げていく。
2つ目は「チーム戦」「ペアマッチ・プロアマ戦」「スタジアムマッチ」などストロークプレー以外の新しいフォーマットの挑戦。
3つ目はショーケースの実行。来年はJ-Tour主催で2試合の開催を予定しており、現在のJGTOや選手会主催の大会を含めて6試合以上が主催競技になる。それらの大会をJ-Tourが運営をして「新しいベストプラクティスのチャレンジを面白いと思っていただけるようであれば、既存の主催者のみなさまに新しいアイデアとして提供する、というショーケースとしての活用を考えています」
また「チャレンジングではある」としながらも、全試合地上波放送や、全選手・全ショットの“見える化”も目指す。選手のストーリー作り、海外に挑戦する選手のサポートなども行っていく。
さらに今年からの施策として、大会中の食事、下部のACNツアーのプレーフィの無償化の2つを発表。現状、下部ツアーの選手は一般アマチュアと同じようにプレーフィを支払っている。それをJ-Tourが負担し、若手選手の負担軽減を担う。
準備期間となる今年は、男子ゴルフ改革への第一歩。諸星会長は「男子ツアーが当分の間、たしかな土台で伸びていくことができると確信している」と力を込める。国内男子ツアーは大きく動き出そうとしている。(文・小高拓)
