パーセーブにはまず道具!
ヘッドスピード 40m/s前後のアマチュアでも、白ティからドライバーが当たると「2打目はショートアイアン」が普通だろう。だが、そこから上がってみると、ボギーやダボ……。ドライバーの飛距離は我々アマと変わらないのに、女子プロは良くてバーディ、悪くてボギー、基本はパーセーブだ。
青木瀬令奈のコーチ&キャディの大西翔太は「女子プロとアマチュアの皆さんのHSはほぼ同じですが、一番の違いはショートゲーム。2打目をミスしても、パーで切り抜ける確率が全く違います。とてつもない技術差があるか?と言えば、そうではないことをまず知ってください」と言う。
「例えば、グリーンを外した20~30ヤードのアプローチ。花道や浅いラフから寄せるのに、女子プロと振り幅も技術もアマチュアの方と変わりません。違いが何かと言うと、使っている道具。 アマチュアの方は飛び優先なのか、ディスタンス系の止まらないボールを使う方をよくお見かけします。でも、女子プロにディスタンス系の人は皆無。
意のままに止めるなら、ウレタンカバーのツアーボールが鉄則だし、ウェッジも見逃せません。長年ダンロップのトップ選手たちのプレーを間近で見てきて、クリーブランドのウェッジとスリクソンのツアーボールは、素晴らしい性能だと実感しています。この組み合わせを正しく選ぶことが、女子プロのパーセーブ力に近づく近道だと思います」 (大西)
RTX6 ZIPCOREがミスをカバー
とはいえ、ボールはたくさん種類がある。コースでミスするのがアマチュアだから、自分の打ち方が悪いのか、ボールが合わないのかの判断も至難の業だ。そこで、まずはクリーブランドの最新作『RTX6 ZIPCORE』ウェッジから解説してもらった。最初は80ヤードの距離からフルショットに近い試打。新しい『RTX6 ZIPCORE』の第一印象とは?
「すごくシャープで構えやすいし、弾道のイメージが湧きやすいです。早速打ってみます。(ピンハイに着弾して)うん、すごくフェースに食いつくと言うか、しっかりスピンが入った安定した弾道が打てました。実は、いまトウ側に打点を外したのに、いい球でしっかりピンまで届きました。何か秘密があるんでしょうか?」
新しい『RTX6 ZIPCORE』は、フェースの進化でウェット条件のスピン量を43%も高めたが、クリーブランドは他社にない独自技術【セラミックピン】をネックに内蔵する。金属が詰まっていれば重心位置がヒール側に来るが、軽いセラミックに置き換えると重心位置がフェースの打点近くに来る。 つまり、トウ・ヒール/上下に打点を外しても安定して距離を出しやすくなる。
グリーンに近い花道から30yやラフから10yも試し、スピン性能を実感する大西。「速く振れずHSを上げられない状況でもすごく球乗りが良くてスピンが入ります。だから着弾地点が下りの状況でもおとなしい弾道でしっかり止められました。もし同じ状況でディスタンス系を使ったら、止まらずグリーンオーバーして1ホールで2、3打は違っていたと思います」。
Z-STARシリーズは3機種選べる!
大西の言う通り、「ツアーボールでなければ、意のままに止めることは難しい」。ここからは、新しいスリクソン『Z-STAR』シリーズ3機種の性能についても聞いてみよう。まず、『Z-STAR』を試した大西はこう言う。
「ボールリフティングしてみましたが、Z-STARの柔らかさやスピン性能がこれだけでも伝わります。ダンロップ契約選手はみな Z-STARを高く評価し、実際に使って結果を出してます。ソフトな打感で球乗りがよく、グッとフェースに食いついて一番スピンが入りますね。これは80yも、短い距離でも同じ印象。【とにかくスピン量が欲しい人はZ-STAR】から試すといいでしょうね」
次に試したのは『Z-STAR XV』。「基本的に、ドライバーで飛ばしたい人なら、まずXVを選ぶべき」と言う大西。今作から3ピースになったが、ティショットの飛ばしにも磨きがかかっているとか。
「リフティングの音もZ-STARと違って、いかにも飛びそうな高い音がしますよ。でも、誤解して欲しくないのは、XVがすごく止まるということ。青木瀬令奈も XV ですし、シリーズの中で比較するならZ-STARの方が止まりますが、XVでも基本的にしっかり止まることは強調したいです。よりコアの芯を感じて打てて、【ドライバーの飛びを優先する人にはXV】がオススメ」
最後に試したのが『Z-STAR ◆(ダイヤモンド)』だ。「PGA ツアー選手たちから【ロングアイアンのフルショットでボールを止めたい】との要望があったそうでボクは初めて打ちますが、星野陸也プロやB・ケプカ選手が◆(ダイヤモンド)を愛用していて、前から存在がすごく気になってました」と大西。
「リフティングではZ-STARに近い落ち着いた音で、打つとカバーはソフトだけど、内部にしっかり芯を感じてコアが負けない感じ。スピンは【 XVとZ-STARの中間だけど、Z-STAR寄り】の印象です。やっぱり、フルショットはすごく止まりますね。近い距離はZ-STARほどではないけど、XVより止まる。最近は飛び系アイアンで止まらない人も多いですし、意外にオススメかも」
【1stバウンド】をチェック!
新作を試し終え、青木瀬令奈のアプローチを語る大西。「彼女は凄いですよ。球を左に置いて高く上げたり、右に置いてドロー目に転がしたり、毎回状況に合わせて球足を自在に操ってますから」。左ヒジを抜くなど見た目に大きく変わらず、シンプルに球位置で操るというが、練習量の少ない我々アマにはハードルが高そう……。
「でも女子プロって、男子のように、難しい技術ばかりじゃないですよ。パワーもないし、先ほど言ったように、あくまでスピンのかかるボールとウェッジが基本になりますし。そして、アマチュアの方でもツアーボールを使う人に特に注目してもらいたいのは【ファーストバウンドの跳ね方】ですね。自分のクセや、ミスの傾向が分かりますから。
高スピンだと、ファーストバウンドが【高く上に】跳ねてすぐ止まる。逆に【前に】跳ねるとスピンが足りずに思ったより転がります。また【右に】跳ねるならカットスピン傾向で、これはこれで止まりやすいですが、反対の【左に】跳ねる傾向のフックスピンだと、ランを足せますよね。自分の傾向がどれか?を知るとボール選びの参考になるかも」
ディスタンス系ボールを使う人の多くが【前に】跳ねがちだが、そんな「オーバーが多く止まらない人には、スピン量が最も多いZ-STARがオススメ」。また、ツアーボールを使っていても「不意にショートする…」と悩む人も多い。大西は「カット軌道で【右に跳ねてのショート】なら、XVだと球足を足せてもっと距離感が良くなるかも」と例を挙げた。
フルショットとは違って、距離の短いアプローチでは「ドロー回転でも弾道には出ない」もの。ただし、ダフリが多くヘッドが下から入る人は「ファーストバウンドで若干【左に】跳ねがちなはず。転がりが嫌なら◆(ダイヤモンド)でスピンを足せて距離感が良くなるかも」とのことだった。
もちろん、青木瀬令奈を例に女子プロはこれら球足の出し方を「ボール位置」でコントロールしている。が、1つの打ち方で再現性を高めたいアマチュアには「やってしまいがちなミス傾向でボールを選ぶ」のもアリかもしれない。
ボール選びのまとめ
「女子プロのパーセーブ力」を例に、アプローチに注目してきたが、いま一度ボールの性能を整理するなら上記のような順番になる。ポイントは75y以上の距離だと『Z-STAR』のスピン量を『Z-STAR◆(ダイヤモンド)』が上回る点だ。
また「自分のスピン量など測ったこともないし、イメージが沸かない」という人は「ダンロップの推奨通りの下記のイメージで選ぶのも一つの手」と大西。本格的なゴルフシーズンの開幕を迎え、今年こそ、女子プロのパーセーブ力に少しでも近づきたいものだ。
撮影/山代厚男
取材協力/船橋カントリー倶楽部