契約フリーで選んだボールは『TOUR B XS』
ギアも契約フリーで複数メーカーのモデルを積極的に試している。アイアンはテーラーメイドの飛び系モデルを7番から入れており、その上はスリクソンのUTをチョイス。クラブの恩恵を上手く利用して、ボールの高さや飛距離を補う意図が見えるセッティングだ。
金田はもともと、ギアへのこだわりがほとんどなかった選手だ。初優勝した時の使用ボールは、当時の契約メーカーがラインナップしていたディスタンス系だった。当時、多用していたランが多めの巧みなアプローチは、ディスタンス系ボールによって生まれていたのだ。
プロはスピン系を使うものと相場が決まっている。ディスタンス系を使用して優勝した例は、今世紀に入ってからはおそらく無いのではないか。この無頓着ぶりは、まさに天才らしいエピソードだと言えるだろう。
初優勝後、当時のコーチである石井忍プロからスピン系ボールへの変更を提案され、以降は軟らかい打感のボールを好んで愛用するようになった。そして、2019年の春からは一貫してブリヂストンの『TOUR B XS』を使用している。
金田は優勝した週に新しいオウンネームボールに変更している。金色で大きく「93」と入れて、“キンクミ”と読むらしい。使い始めてから即優勝と、縁起の良いオウンネームとなった。
今年の2月、金田は「TWGT(Thanks Women's Golf Tour)」という、プロを目指す若手女子選手を対象とした試合に出場している。あれだけのキャリアのある選手が、こうした試合に参加した事自体が珍しいのだが、金田はこの試合でパッティングに苦しみ、あまり好ましい成績を上げることが出来なかった。
眩しいほどの才能を持ち、感覚のままプレーしてした初優勝の時代。
そこから長い月日を経て、猛練習を積み、自分にあったギアを選んで、ボールコントロールを重視するスタイルに磨きをかけた。いわば、大人のゴルファーとして生まれ変わった金田が挙げた、ゴルフ史に残る勝利だった。