二所ノ関親方とフィッターの中納氏 (撮影:高木昭彦)
長い相撲の歴史の中で、最高位の横綱まで昇りつめたのはわずか73人。そのうちの1人、第72代横綱・稀勢の里、現・二所ノ関親方は引退を機にゴルフを始め、わずか3年で平均スコア82まで上達したという。相撲の前は野球をやっていたこともあり、「道具にはこだわるほう」(二所ノ関親方、以下親方)だそうで、現在の使用クラブには工房系のものもあり、そのこだわりが本物であることがうかがえた。
そんな親方が興味を持ち、「平均スコアを82から3つ縮めて70台にしたい」という目下の目標達成のために、門を叩いたが『PXG』のフィッティングスタジオだ。『PXG』は米国の大富豪、ボブ・パーソンズ氏が2014年に創業し、性能に一切妥協せず革新的なクラブを出し続けているトップブランド。きめ細かいフィッティングにより、使用者に完全にフィットしたクラブは世界中で高い評価を得ている。
フィッティングのキモは先入観をなくすこと
今回親方のフィッティングを担当するのはPXGジャパンのクラブフィッティングスペシャリスト・中納貴博。中納によれば大事なことは、「先入観を持たずに打ってもらうこと、そして1球目で気持ちいい球が出ること」だという。
フィッティングがドライバーからスタート。まずは親方が現在使用しているドライバーの数値を確認する。ヘッドスピードは50m/s近く、トータルで274.2ヤードのビックドライブだが、多かったのがスピン量で3582rpm。「300ヤード飛ばしたい、ドライバーは男のロマン」だという親方のために、スピン量を減らし、ボールスピードを安定させ、さらに前に行くドライバーを模索していくことに決まった。
繊細な作業で理想の1本をつくる
ヘッドの重心を微調整することで、親方の理想の振り心地を探していく
親方の感性をいかすために、あえて多くを語らず、最小限のやりとりで会話が進んでいく。2タイプあるヘッドは小ぶりな『0311 GEN5』のほうが親方のスイングに合うことが判明。1球目から快音を響かせていた。また親方は「うにゃっ!としなるシャフトが好き」だそうで、中納はヘッドの重心を変えることで微調整し、鋭敏な親方の感性にあったクラブを組み上げていく。
シャフトを何本か試し、またヘッドの重心を変える繊細な作業を何回も繰り返した末に組み上がった一本に親方からは「来た!最高」の声が。スピン量は2000回転台まで減り、トータルは296.3ヤードまで伸びた。この一本はまだ飛距離が伸びる要素があるそうで、親方も大満足の1本が組み上がった。
【ドライバー】
0311 GEN5 9度(ウェイトポジション、F2.5g・B10g・H5g)
シャフト:グラファイトデザイン ツアーAD UB6X 45.5インチ