なぜ、今カスタムフィットなのか?
本社竣工時からフィッティングルームを設けて「カスタムオーダー」を展開。ところが、フォーティーンの事業内容は次第に変化を迎えていく。「クラブ設計」を各社が内製化し、事業は縮小していった結果、フォーティーンは他のメーカーと同様に、クラブを量産し、販売する方向へとシフトする。
「ここ高崎のヘッドオフィスで創業当初からカスタムフィッティングを行っていましたが、量販へと事業の中心が移りゆく中、そこに注力しづらくなりました。ただ、近年ゴルファーの好みも多用化していることから、創業時のフォーティーンISMを復活させたいと、準備を進めてきました」(池田氏)
「全ては、アマチュアのために」。竹林ISMは通底
「ヘッドパーツを購入して、カスタムフィッティングするゴルファーには、そういった上級者の方が多いのは事実ですが、難しくて使い手を選ぶものを作ろうなどとは、一切考えておりません。むしろ逆で、創業からのモノづくり、竹林の『アマチュアの最良の結果のためにクラブを作る』考えは踏襲しています。
遡れば、同社を一躍有名にした『MT-28』ウェッジや、アーニー・エルスが使用してメジャー勝利した元祖・中空アイアン型UT『HI-858』などは、全てがアマチュア向けに開発されたモデルだった。
『RM-B』は7番で30度。ムリせず飛ばせる
「これも弊社に流れるISMですが、ゴルファー個々人でクラブの扱いやすさは、ヘッド形状の違いに現れます。どのモデルが使いやすいのか、好みで選んで頂ければ。そして、コンボセットで番手群における最適化を図ることも可能になっています」。
竹林は「一般アマチュアに30度未満のロフトのアイアンは厳しい」との哲学も残している。ロフト30度の7番アイアンは、そこからすれば「少し余裕を持った状態で打てて、しっかり飛ばせるギリギリのライン」と、池田氏は言う。
「一体鍛造でヘッド重量が決まっているため、微細な重量でさえムダにしないため、最も細かなCNCミーリングでバックフェースを仕上げています。より低重心で球の上げやすさを追求してこの加工にこだわり抜いたため、量産不可能になってしまいました……」
この部分こそ、「創業時のISMの最たるもの」が現われていると言えるだろうか。コストを下げて量産し、利益を取るのがクラブビジネスの本質だが、『ゴルフクラフトフォーティーン』にその概念は当てはまらない。創業時の「一人ひとりのための最適を」の考えを儲け度外視で貫いていた。
副産物は、「カッコ良さ」。唯一無二の存在感
量産の効かないCNC処理、徹底的に引き算でデザインされたシンプルなアイアンは、目の肥えたゴルファーを一瞬にして虜にしていた。「お店の方の話しでは、【カッコいいから欲しい】【打てないかもしれなくても、とにかく所有したい】との声が殆どだそうです。有り難いことに、まだ打つ前から、モノとしての存在感に期待して頂けているようです」。
また、同行したハンデ8〜9のヘッドスピード45m/sのアマチュアも、『RM-B』の8Iで163ヤード前後、7Iで175〜180ヤード前後をマーク。いずれも「軽いストレートドローが意のままで、マッスルバックなのにラクに飛距離を出せた」と、興奮気味に語っていた。
文句ナシのカッコ良さと、ラクに距離を出せる“バッファ”のある性能。唯一の難点は、“手に入れづらい”点のみ。フォーティーンの創業時の息吹が復活し、「第2弾の商品も控えていますので、ご期待ください」とのこと。手に入れられるゴルファーは、かなり限られている。
Text/Mikiro Nagaoka