昨シーズン、ツアールーキーとは思えない安定した戦いぶりで賞金ランキング4位となった西郷真央が、開幕戦で初優勝。アマチュア時代から活躍していた西郷はプロになってからは、『TOUR B XS』ボールを使用。国内外でBSのツアーボールを選択している選手が増えている。<br><br>text by Kazuhiro Koyama photo by Getty Images
テストを重ね、プロ入りからBSのツアーボールを使用
2020−2021シーズン、優勝はなかったものの2位が7回と躍進した西郷真央が、2022年開幕戦の「ダイキンオーキッドレディス」で早々とプロ初優勝を果たした。昨シーズンはいつ勝ってもおかしくないと言われつづけながら、なかなか優勝に手が届かない試合が多かったが、今回は最終組から二つ前でまくっての優勝。上位陣が崩れる幸運もあったが、幸先の良い勝利で今シーズンはどれだけ優勝を重ねるのかと、楽しみになるような勝ち方だった。
ミズノ契約の印象が強い西郷だが、ボールはブリヂストンの『TOUR B XS』を愛用している。日本女子アマを制するなど、アマチュア時代から頭角を表していた西郷だが、ジュニア時代は他社メーカーのボールを使用していたようだ。日本女子アマではタイトリストの『PRO V1x』を使用していた。ブリヂストンに変わったのは、姉弟子の原英莉花の影響もあったかもしれない。時松隆光や吉本ひかるなど、クラブはミズノでボールはブリヂストンという選手は少なくない。
昨年の賞金女王、稲見萌寧がシーズンオフに各社のツアーボールをそろえて、おびただしい数のテストを行い『TOUR B XS』を選んだことはよく知られている。2020年初頭に正式にボール契約し、それからはツアー9勝を挙げて賞金女王、そして東京五輪銀メダルと大躍進を遂げる。
2021年の「楽天スーパーレディス」では「TOUR B」のボールでホールインワンを達成していた
西郷も稲見同様に、プロ入り前に入念なテストを行って、数種類のボールを試しながら最終的に『TOUR B XS』を選んだ。決め手となったのは、『XS』のアプローチ、パッティングでの軟らかい打感だという。『XS』特有の軟らかくて、もちっとした感触を距離感を出しやすいと評価している。また、ソフトな感触でありながら、より硬めの、飛び性能が高いボールにも負けない飛距離が出ていたこともポイントだった。飛距離は出て、それでいてアプローチやパッティングの「乗り感」の良さでボールを選んだようだ。
優勝争いをしていながら「横に出す」という勇気ある選択が勝利を呼び込んだ
優勝した「ダイキンオーキッドレディス」では、本来であればスコアを伸ばしたい最終18番で、セカンドショットをグリーン左のバンカーに入れてしまった。アゴが高く、本来であれば絶対に避けなければいけないバンカーだったが、西郷は冷静に横に出して、グリーン奥の小山のような場所にボールを運んだ。
バミューダ系のラフで、ピンに向かってかなり下っている状況。ボギーを覚悟しなくてはならない難しいシチュエーションだったが、西郷はふわりと浮かせてボールの勢いを抑え、下り傾斜を利用してトロトロとピンの根本に運び、なんなくパーをセーブした。これが事実上のウィニングショットになるスーパーアプローチだった。
最終日18番、下りのアプローチをタップインできる所にまで寄せ切った、ウイニングショット
よほど自信があるのだろう。難しい状況にも関わらず、西郷は決断も早く、まるで練習ラウンドのようにリラックスしたショットを見せた。止めにくい状況でも、軟らかい球質で止められる『TOUR B XS』の性能と、プロの技術が凝縮したアプローチだったと言えそうだ。