“スコアが出る革底”のイメージを自ら覆す
「ゴルフには“球を打つ”と“歩く”動きがあり、打つ・スイングの土台となる足元の安定性やグリップ力が不可欠です。どんなに合うクラブや飛ぶボールを使っても、足元が不安定だと生かせませんし、ゴルフシューズは、それだけを追求すればいいわけではないく、ラウンドによっては10キロ近く歩くし、5〜6時間も履き続けます。コースには傾斜やアップダウンなど様々なライがあり、パットのラインを読むためにしゃがむと、スクワットを何回もするのと同じことだと言えます。
ミスをしたら歩く距離は長くなるし、球を大曲げしたら走って探しにいくこともあると思います。つまり、長く履いたり歩いたりしてもストレスがないこと(動きやすい、疲れにくい、ムレにくい)が不可欠となります。そういう“快適性”と“安定性”という両極端な要素が求められるゴルフシューズは、数あるスポーツシューズの中でも極めて特殊な存在。間接的にスコアにつながる重要な“ギア”だと考えています」(以下、水野氏)
それは分かるが、ゴルフシューズであれば、それほど差異があるとは思えないが……。
シューズは進化したというが、それも謳い文句ではないのか。
人工皮革の進化も目覚ましい。そういう“素材改革”も生かして、新しい構造やパーツの組み合わせを取り入れられるようになった。そのノウハウをゴルフに応用し、従来できなかった“軽くても安定する”“柔らかくてもズレない”といった、相反する要素が両立できています。フットジョイはゴルファーだけに向き合って、開発をどんどん進めているんです」
柔らかくて軽やかなのにホールド性◎
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「ゴルファーには色んなスタイルがあり、アパレルなどの趣味・趣向も多様化しています。『ハイパーフレックス』は、昨今のトレンドであるアスレチックシューズの“顔”をしていますが、ゴルフに必要な機能をふんだんに載せました。機能性がなければフットジョイのシューズとは言えません。まず、足元を安定させるために最も大事な、カカトと甲を素早くフィットしながらホールドする『WRAPID(ラピッド)』を搭載しています。
アッパーが“フルニット”ということは、雨が降ったり朝露がついた芝に触れると水が浸みてきそうだ。
軽くてクッション性があって疲れにくく、耐久性もあります。いま考えられる最も優れたミッドソールですね。アウトソール表面の突起がついたプレートは『TPU』でスイング時も足元がネジれません。ゴルフに必要な機能を追求する『チューンド・フォー・ゴルフ』コンセプトで作られたシューズだからこそ、ツアープロも着用するのでしょう」
プロが認めた“安定感”と“軽さ”の融合
「クラシカルでオーセンティックな見た目でも、新テクノロジーを載せた『ニュー クラシック』コンセプトです。従来のものは“安定感”を高めるため“重い・硬い”が伴いましたが、長時間履き続け長距離を歩くと、足の負担はかなりのもの。そうではなく、クラシカルでも“安定感”と“軽さ”を両立したのが『ドライジョイズ プレミア』。プロの足さばきに応える安定感がありながら、軽量で歩きやすく疲れにくいため、先の『マスターズ』ではモデル別使用率1位(自社調べ)でした」
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「国内モデルは人工皮革のアッパーです。軽さや防水性はもちろん、アッパーに求められる適度な硬さがありつつ“内張りレザー”を貼って足を包み込むような柔らかさも持たせてます。メンテナンスしやすさや汚れにくさも人工皮革に分があり、天然皮革よりリーズナブル(2万円台)なことも見逃せません。以前に比べ今の人工皮革は【これって本革じゃないの?】というほど質が向上し、間違いなくメリットがあります」
シューズを裏返してソールのパターンを見ると、色違いの細かい凸部が入り組んでいるが、その狙いは?
歩く時やスイングでは足の母指球に力がかかるので、凸部を密集させグリップ力を高めます。カカト側は柔らかい凸部が外側ですが、8〜9割の人が歩く際に“ヒールストライク”といってカカトから着地します。だから、柔らかく接地できるクッション性を持たせ、滑らせない。それが『ニューバーサトラックスプラス』アウトソールです」
ネーミングに込められた、『FJ』のストーリーと想い
「1857年の創業から約50年おきに、極めて重要な決断をした3人のリーダーがいて、その“レジェンド”の名前をモデル名にしました。時代の変革期にあって、今の私たちが『もう一回、新しいチャレンジをしていく』という思いも込めています。フレドリック・パッカードは創業者であり、当時は画期的だった左右の足の形に合うブーツと靴を量産化しました。“より足に合った靴を多く提供する”という想いは、フットジョイのシューズ作りの原点と言えます。
1910年に入社したパーリー・フリントは、本格的なゴルファーで“ゴルフのためのシューズ”作りに力を注ぎます。グリップ性を高めるメタルスパイク鋲と、それを支えるソールに工夫を凝らしたゴルフシューズを開発しました。創業から100年たった1957年には、ターロウ・ファミリーが会社を買収します。大きなビジネスだったドレスシューズから手を引いて“ゴルフシューズに専念・特化する”英断を下しました」
そもそも『ドライジョイズ』のネーミングには、どんな意味が込められているのだろう。
モノ作りを追求すると言っても、ハード面は他のメーカーとそれほど変わらないんじゃないか? この疑問には前出の倉又氏が答える。
フットジョイには伝統があると分かったが、それによって何が生まれるのだろう? 水野氏はこう結ぶ。
「フットジョイというブランドの伝統は大事にしています。ただそれは、先人たちが新しいことを追い求め進化し続けて、積み重ねた結果を後から振り返った人や周りの人たちが“伝統”と評価しているのでしょう。私たちは伝統に頼るわけでもこだわるわけでもありません。もっと新しい何かを、イノベーティブなこと、より良いモノを求めて、常にその時のベストを目指す。全てはゴルファーのためです」
撮影(静物)・高橋淳司
文・新井田 聡