『ベンタス』とは、どんな設計なのか?
「元々、弊社の製品には日本で企画し製造しているものと、アメリカで企画しているもの、大きく2つの流れがあります。『スピーダーエボリューション』は日本が企画する商品ですが、今回の『ベンタス』はアメリカ企画のものですね。やはり、体格やパワーが異なるため、シャフトに求めるものはどうしても違いが出てきます。今回の『ベンタス』はPGAツアー選手が求める高い要求が背景にはあります。
製品特長は、【VeloCore Technology(ベロコア テクノロジー)】と呼ぶ、今までにない安定感と叩けるフィーリングを実現するための【マルチバイアス構造】ですね。フルレングス超高弾性70tカーボンと高弾性カーボンから構成していて、特に、【オフセンター時のヘッドのねじれを抑制して】、優れたボールコントロール性能を狙っています。さらに、シャフト先端剛性を高めているので、生み出したパワーを逃さずボール初速の最大化を生み出します」(飯田氏)
なるほど、やはり、貞包氏が言うように、【パワーヒッターが作り出したエネルギーを、ロスなく伝達しやすくする設計】のょうだ。出力の上がった渋野日向子にとって、より先端剛性の高い『ベンタス』だと、エネルギー効率がさらに良くなるということか。
ヘッドMOIが高まり続ける中で、必須の進化
「おっしゃるように、弊社の日本企画の『スピーダー』は、これまで様々なモデルで復元スピードの速い飛距離重視のモデルをご用意してきました。ですが、国内男子ツアーで使用実績の高い『スピーダーTR』のように、先端剛性が高く、叩けるモデルも少ないながらご用意してきました。そして、一概に先端剛性が高いと、復元感がなくなる、走らないというわけではありません。
今回の『ベンタス』で言えば、一番大切なポイントは【ベロコアテクノロジー】による、ねじれの抑制。走る、走らないのフィーリングよりも、【ミスヒットしてもヘッドの挙動を抑える】ことをまず第一優先していることがあります。昨今は、慣性モーメントが極大なヘッドが各社から増えていることもあり、まずそこに対応した点に注目いただけると有り難いですね」(飯田氏)
なるほど。たしかに大MOIヘッドが、世の流れである。そして、同時にこんなことも思った。「デカヘッドほどミスヒット時にヘッドの挙動が大きく暴れるから、それも当然の方向だなぁ」。インパクトをスーパースロー撮影するとよく分かるのだが、デカヘッドで芯を外した際のヘッドの暴れは、一瞬、目を疑うほど酷いものである。そこに対応した方がいいに決まっている。そこで激しく芯を外しがちな筆者も、実際に『ベンタス』を試してみることにした。
常人の倍以上芯を外す筆者でも大丈夫!
結論として、とてもFWに置きやすい組み合わせであることは、一瞬で理解できた。スピンの少ない『G400LST』でも筆者は吹き上げてしまうことが多々あったが、先端剛性の高さ故か、そういった球が一切出ない。加えて、『ベンタス』のねじれ抑制の効果なのか、特にトゥ側に外した際の当たり負けの類が収まったように感じた。
加えて、ヒールヒット時の、スライスも少なく感じた。これは当然『G400LST』が持つ元々のミスへの強さもあるのだろうが、『ベンタス』がそのヘッド特性を増幅し、より安定して距離を出す方向に動いていると想像がつく。あとは、「PGAツアーのバケモノたちが使用するだけあって、ハードすぎるのでは?」という想像について。
ただし、つかまりや左右のブレは減ったものの、『G400LST』の8.5度を、途中でロフトを足す必要は感じた。スピンが減り、弾道が少し強くなったため、ロフトで見栄を張る必要は一切ないシャフトだと言えるかもしれない。
Text/Mikiro Nagaoka