松山英樹もドライバーに「つかまり」を求めている
アスリートモデルの領域であっても、良いクラブの評価基準は「左を恐れずに叩ける」から、「つかまりがいい」に大きく変わったと言える。これはベテランのゴルファーからすれば信じられない大転向ではないだろうか。これだけ変わってしまった理由のひとつが、プロや上級者もまたアベレージ層と同様に、“つかまる”ドライバーを求めはじめたことだ。
その顕著な例が松山英樹だ。彼がプロ入り以前から8年間、『SRIXON ZR30』を愛用したことはよく知られている。このモデルはディープフェースでハイバックな形状で、425ccというヘッド体積以上に小ぶりに見えるヘッドだ。見るからに硬派なドライバーで「左を恐れずに叩ける」ドライバーの筆頭格と言えるだろう。
しかし、近年の松山はキャロウェイの『GREAT BIG BERTHA』や『XR SPEED』など、アスリートモデル以上につかまりのよいドライバーを選択してきた。今季もプロの多くが選択する『EPIC FLASH SUBZERO』ではなく、アベレージモデルの『EPIC FLASH(通常モデル)』を愛用している。
この間、松山はドライバー飛距離を20ヤード近く伸ばしている。体力面の向上もさることながら、選択するドライバーの特性が変わったことが、松山に劇的な飛距離アップをもたらしたと言っても差し支えないだろう。
では、「左を恐れずに叩ける」特性のドライバーには、もはやニーズはないのだろうか? 現代でもチーピンフックに悩むアマチュアは少なからず存在する。重心角の大きな現代ドライバーは、一度フェースが返る動きが発生すると、大きな慣性でフェースが強く返ってしまうことがある。この挙動に苦しんでいるフッカーは多いのではないだろうか。
現代は、それをシャフトの面から補うのが効果的だ。先端部の剛性が強く、急激なフェースの返りを抑制するような動きをするシャフトが強いフックを防いでくれる。フレックスが硬いシャフトも効果的だが、ヘッドスピードが遅いゴルファーには厳しいだろう。シャフトの特性やヘッドの調整機能などを組み合わせて、左のミスになりにくいスペックにすることは十分可能だ。
ここ数年来のドライバーの進化は、クラブの評価やスイング理論などを大きく変えてしまった。そのインパクトは、パーシモンが金属ヘッドになったり、糸巻きバラタボールがウレタンカバーになったりする以上の変化が起きたといっていい。しかし、それに気づいているゴルファーはまだ少ないようだ。先入観を捨てて、時にはこれまでの常識から離れてドライバー選びをする必要があるだろう。