筆者 「同じ8Iでも0.5インチ『UD+2』が長いです」
一ノ瀬 「0.5インチ“も”なんですか?」
マーク 「0.5インチは、天と地ほど違いますよ。アイアンでは1番手上の長さということになるんです。アイアンは長さが弾道の高さや飛距離に効いてくるので、一般に、長い方が飛びに関しては有利ですよ」
筆者 「はい。一般論ではそうなります。ただ、ミート率がどちらの方が高くなるかと言えば、長くなるにつれて難しくなるところもありますよね?」
マーク 「そうなんだよ。そこは何かを得れば、何かを失うという、ゴルフクラブはトレードオフの関係性が出てくるからね。だから、ゴルファーそれぞれの弱点と相性を見極めなくちゃいけないよね〜」
一ノ瀬 「なるほど。先程、打った感じだけで言えば、『UD+2』はかなり弾く打感だなぁと感じました。『Mグローレ』の方がおとなしい感じなので、『UD+2』の方が飛びそうな感じというか…」
マーク 「同じロフトで、同じ長さなら、多少弾きの違いはあるかもしれないですが、今回は7Iよりも8Iのロフトが全然違うし、アイアンは飛びだけで決めるものでもないですからね〜」
一ノ瀬 「自分の8Iは転がって140ヤード弱です」
――『Mグローレ』バシッ✕10、『UD+2』カシッ✕10――
筆者 「さすが!人間試打マシーン。でも、まだ弾道計測器の画面は見せませんよ!」
マーク 「なんや〜長岡くん、何を企んでるの? では、一ノ瀬さんも打ってみてください」
――『Mグローレ』パシッ✕10、『UD+2』カキッ✕10――
一ノ瀬 「やっぱり、長さ的には自分のアイアンに近い『Mグローレ』の方が打ちやすかったんですが、『UD+2』の方がちゃんと当たったときに飛んだ気がしますね…。う〜ん、どっちもいいけど、どっちが合うのかなぁ…」
筆者 「では、一発の飛びではなく、いい当たりをした平均的なデータを計算するので、少し時間ください」
マーク 「じゃあ、その間に。一ノ瀬さん、最近アイアンを買い替えたと仰ってましたよね? どれ、見せてください。ほう、ゴルフパートナーの『ネクスジェン6』ですか。なるほど、これで8Iの飛距離はどれくらいですか?」
マーク 「なるほど。少し、打痕とスイング的につかまらない傾向もありますか? 短い番手は引っかけたりしますか?」
一ノ瀬 「まぁ、慣れていないせいもありますが、7I以上はつかまりが悪いですし、引っかけもときどき出ますね…」
マーク 「なるほど。長岡くん、弾道データの集計は終わった?」
筆者 「スペック通りの飛び。でも最高到達点は意外…」
そして、肝心の一ノ瀬さんですが、ヘッドスピード40m/s弱の換算で、『UD+2』が163ヤード強、『Mグローレ』が155ヤード弱ですね。でも、意外なことに、高さが『Mグローレ』が出るデータになってました…。ボクが打つと逆なんですけどね…」
マーク 「え〜、ボクがさっきナイスショットしたときは『UD+2』はしっかり上がっていたけどなぁ…。やっぱりロフト2.5°の差が出たかぁ〜。う〜ん、まぁでも『UD+2』は長いから少々ダフリやすくもあるのだけど、それを補う機能があるからなぁ〜」
一ノ瀬 「やっぱり、振りやすい長さというか、私が元々普通のアイアンが打ち慣れているからでしょうか? しっかり打ち込める感じは『Mグローレ』の方がしたんですが…」
マーク 「ちょっと弾道データ見せて。うん、大体アイアンのスピン量というのは、一般的なロフトのものだと、番手かける1000というのが最適スピン量なんです。で、いま見てみると、やっぱり『UD+2』は多少手前から入っていたせいもあって、スピン量が少なく、『Mグローレ』の方が多い。これはロフトが『Mグローレ』の方が2.5°多くて長さが短いこともありますが、振り切れて打ち込めた可能性もありますね。それに、大事なことがソール形状というか、バンスなんですよ」
一ノ瀬 「バンス???(うぅ…、また難しい話が…)」
マーク 「見るべきは、ダフリ気味に入ったときの左右の曲がり方です」
一ノ瀬 「なるほど…(って簡単じゃないですってば…)で、私にはどちらがいいんでしょう?」
マーク 「一ノ瀬さんが、普段スライス傾向で右へ飛び出すのを嫌うなら、『Mグローレ』を薦めます。反対に、フック傾向を嫌がるなら『UD+2』ですね。間違えてほしくはないのですが、いずれも、少しボールより手前からヘッドが入ったとき、どういう球が出やすいか?です」
一ノ瀬 「なるほど、それなら『Mグローレ』な気がします。というよりも、やはり長さが短いからか、『UD+2』より『Mグローレ』の方が上から打ち込める感じがしたので」
筆者 「マークさん、一ノ瀬さんへの説明はそれでいいんですが、バンスを理解している読者もいるので、分かりやすく説明してください」
一方、『Mグローレ』は普通のアイアンと同じく、ダウンブローに打ち込むタイプの人に合うね。ソールにしっかりバンスがついていることもポイントで、多少フェースが開いて入っても、接地した際にヘッドが返ってくれます。つかまりが非常にいいので、『Mグローレ』はダフる人より、カット軌道のスライサーと相性がいい。これは、『Mグローレ』のドライバーにも同じことが言えるんだけどね」
筆者 「マークさん、被せてもいいですか?」
マーク 「どうぞどうぞ」
筆者 「実際、弾道計測データでも、一ノ瀬さんはナイスショットも『Mグローレ』は全部ドロー。『UD+2』は、全部フェード傾向でした。そして、ミート率的にも短い『Mグローレ』が多少上回ってましたね。単純な同じ8I同士の飛距離差はロフト2.5°と0.5インチの差で8、9ヤードくらいありますが、それはスペック通りのもの。
『UD+2』はとにかく+2番手の極限の飛びと、ダフった時でも左に行かせたくない人に合うぶっ飛び系。そして、『Mグローレ』は、普通のアイアンを使い慣れた人が、1.2番手ほど伸ばせる上、打ち込んでタテの距離も従来どおりしっかり打ち分けられる。スライスせずにミートしやすい、もう一つのちょいぶっ飛び系。ということでいかがでしょうか?」
マーク 「う〜ん、まぁ、ええよ〜、長岡くん。今回は分かりやすくそれで行こう! ファントムカメラで判明した、インサイド・アンダー軌道の細かいバンス設計と、インパクト時のフェース挙動の関連性の話は、また別の機会に企画にしようよ!」
筆者 「はい。一ノ瀬さん、というところで宜しいでしょうか?」
一ノ瀬 「は、はい。今日はありがとうございました。(ファ、ファントム??? インサイド・アンダー??? も、もう、難しい話はお腹いっぱいです……)」
Text/Mikiro Nagaoka