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最後の最後にマスターズの勝敗を分けたもの【舩越園子コラム】

最後の最後にマスターズの勝敗を分けたもの【舩越園子コラム】

配信日時:2017年4月10日 12時19分

そう言ってしまうと、故障して棄権したジョンソンは別としても、ジェイソン・デイ、ロリー・マキロイ、松山英樹は、なぜそこに食い込めなかったのかという疑問が浮上するかもしれない。冷たい言い方に聞こえるかもしれないが、そこにはそうなっても不思議ではない理由がやっぱりあったのだと思う。

デイは肺がんで余命12か月と診断された母親を米国へ呼び寄せ、マスターズ前週に行なわれた手術に立ち会うなど家族のことに心を砕いた。母親の手術は成功し、デイは笑顔でオーガスタにやってきたが、そうやって迎えたマスターズで100%の力を出すことはできなかった。

マスターズで優勝すればキャリアグランドスラム達成となるマキロイは、昨年のうちから今年のマスターズに照準を合わせようと意気込んでいたが、その意気込みが裏目に出て、今年1月に肋骨を疲労骨折。以後、7週間も戦線離脱を強いられたマキロイにオーガスタを制することはできなかった。

昨秋からの好調を肝心なときに持続できず、ショットもパットも不調続きのままオーガスタにやってきた松山が「チャンスはない」と言い切るほど優勝争いの蚊帳の外に置かれたことは、ピークをうまく合わせることができなかったことの反映だった。もちろん、「それが実力なんで――」と言った松山自身が、それを一番、痛感していた。

選手たちの実力差がとても小さい今だからこそ、ほんの小さな不安や不調や出来事が成績や運命に大きな影響を及ぼす。必ずしても経験がモノを言うわけではな、マスターズ覇者のスピースやスコットも今年は勝つことができなかった。

それならば、波乱続きだった今年、そして技術の差がひっ迫している今、プレーオフを戦ったローズとガルシアは他選手たちと何が違ったのか、どこに違いがあったのかと考えたとき、思い浮かぶ答えは一つしかない。苦労や不調を嫌というほど味わい、人生の谷の厳しさを嫌というほど噛み締め、当たっていたスポットライトが当たらなくなったときのやるせなさ、情けなさを誰よりも味わってきた2人だからこそ――。

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