これが山崎の記憶するところの、心筋梗塞の手術を受ける前に濱田医師と交わしたやりとりである。ちなみに、濱田医師が山崎が“助からない”とする根拠としたというCPK(クレアチンフォスフォキナーゼ)は、心臓や骨格筋など筋肉の中にある酵素で、その細胞に異常があるとCPKが血液中に流れ出し高い数値を示すので、その場合は心筋梗塞が疑われる指標の一つとなるものだ。
では次に、濱田医師は手術をする前に山崎にどのような言葉を掛けたのかを、濱田医師本人に語ってもらおう。(※心筋梗塞の体験を多くの人に伝えたいという山崎泰宏の強い思いから、濱田頼臣医師には特別に許可をいただいて取材しています)
手術前に血液検査の結果、CPK数値が異常に高く、『これは助からない数値です』と言われたという山崎の記憶について、濱田医師はこう語る。
「まあ本人は、そういうふうに記憶をするんでしょうね、多分。しかし僕らはそのときには、『心臓の筋肉の障害がかなり高い値で出ています』という言い方で話をしたと思います。具体的にCPKの数値の話をしたのは翌日ですね。手術当日の23時の採血では数値的には確かに9540まで上がってかなり危険な状態でした」
では、実際に濱田医師は山崎にどのような言い方で、手術を受けるか受けないかの『選択』を迫ったのか。
「『心電図変化とエコーの結果から、心筋梗塞と思われます。このまま放っておいたら死ぬかもしれないので、今から緊急でカテーテル手術をしますが、よいですか』と言いました。山崎さん以外のケースでも、重度の心筋梗塞の場合は、そういう言い方をします。それは事実なので」
