白熱のシーズンが終わった国内女子ツアー。今季全36試合を振り返り、大会ごとに印象に残った“1シーン”を紹介する。
■Vポイント×SMBCレディス(3月21~23日、千葉県・紫カントリークラブ すみれコース、優勝:吉田優利)
2位に8打差で最終日を迎えた吉田優利は、4バーディ・1ボギー・1ダブルボギーの「71」。結果はトータル13アンダー、2位に9打差をつける圧勝だった。
しかしその朝、吉田には“いつもと違う緊張”があったという。
大差リードで迎えた最終日。SNSでも「もう負けない」「吉田優利が勝つ空気」という声があふれ、本人も「いつもの緊張とは違って、ちょっと気持ち悪い感じ」と吐露。“勝って当然”の重圧に、初めて飲み込まれそうになっていた。
その空気を変えたのが、1番・2番の連続バーディだった。ショートすれば難しいアプローチが残る厳しいピン位置に、2ホール続けて1メートルにつける攻めのショット。「朝バーディ、バーディでスタートした時点で、自分のゴルフをしていい日だと思えた」と大きく息をついた。
この大会で光ったのは、“スイングのタイミング” だ。今週に入って調整がハマり、フェアウェイキープ率は83.3%で3位。「悪いときはインパクトのタイミングが遅い。もう少し速いタイミングで球をとらえたい」と語り、3日間はそこだけを意識。自分のタイミングを取り戻したことが圧勝につながった。
一方で、吉田はアメリカでの苦い経験も忘れていない。昨季は米ツアーで16試合に出場し、予選落ちは9回。スイングを探り続け、「何が通用するか分からなかった」と迷い続けた。
それでも「挑戦したこと自体は間違っていない」と振り返る。ナショナルチームのガレス・ジョーンズ氏とも連絡を取りながら、主戦場の米ツアーへ備えていた。
9打差という圧倒的な勝利。その裏にあったのは、重圧を受け止めながらも自分のスイングと向き合い続けた時間だった。この大会で見せた“勝ち切る強さ”は、2025年シーズンの吉田優利を語るうえで欠かせない1シーンだ。
